第77章 共栄
「んじゃ、みわんちにレッツゴー」
車が、レストランの駐車場から出て行く。
これが、今日最後のドライブだ。
2日間もあったのに、あっという間だったな……。
誰かが、見てない隙に時計の針を勝手に回してるんじゃないのかな。
きっとそうだよ。
本当はまだ、会ってから1時間くらいしか経ってない筈。
そんな悲しすぎる妄想で誤魔化すほど、胸がジンジンと痛い。
恨めしくなる程に道路は閑散としていて、信号も赤になる事が殆どなくて、もう私の住むマンションが見えて来た。
ああ、やだよ、終わっちゃう。
デート、終わっちゃう。
マンションの目の前で、ゆっくり車は停止する。
「……ありがとう、涼太」
「うん、気を付けてね」
「……」
「……」
「あ、あの、グラス……見たいな。少しだけ、上がっていく? あったかいお茶淹れるし……」
気が付いたら、口走っていた。
早く帰してあげないと、ゆっくりお風呂に入らせてあげないと、ゆっくり眠らせてあげないとダメなのに。
「そっスね、じゃあチョットだけ。車、停めてくるから先に家入って待ってて」
「あ、うん、エントランスで待ってる」
意外にも涼太はすんなりOKしてくれた。
エントランスに入り、郵便物を確認してからスマートフォンを確認する。
そうだ、あきに連絡しておかないと。
急いでメッセージアプリを起動する。
"あき、ごめんね。
涼太が部屋に来るんだけど、
いいかな?
多分、そんなに長くは居られ
ないと思うんだけど……"
送信すると、すぐに既読マークが付いた。
そして間も無く返信が。
"オッケー。
多分あたしは帰るの遅くなる
と思うー。
彼、明日仕事だし、泊まりは
しないから家帰ろうと思うん
だけど、いい?"
いい? って……いやいやいや、
あきに気を遣わせてどうするの。
"大丈夫だよ、突然ごめん!"
「みわ、お待たせ」
あき、気を遣わせてごめんね。
でも、まだ涼太と一緒に居られるのが嬉しくて。
涼太も……我儘言って、ごめんね。