第77章 共栄
工程自体は、さほど難しいものではなかった。
簡単に言うと、紙に書いた絵柄をカッター等で切り抜いて、それをグラスに貼り付け、隙間ができないようにマスキングテープで固定。
上から機械を使って砂を吹き付けるようにすると、切り抜いた柄がそのままスリガラスのような模様になるというものだ。
もちろん、テンプレートもいっぱいあって……時期的にクリスマスの物が一番多かったかな。
テンプレートを使えばお店に置いてある物のような本格的な物が出来上がるんだけど、私たちはあえて手描きをする事にした。
「出来た……!」
お互い、見えないようにラッピングをして貰って、持ち帰る事に。
後で、ゆっくり見せ合う予定。
また、ドライブの時間。
周りも気にせずふたりだけの会話。
車……好きだな。
「あ〜、もう1泊すれば良かったっスね」
「ごめんね、私の休みが取れるか、ギリギリまで分からなかったから……」
とは言え、あんな高級宿に連泊したら、それこそいくらかかるか分かったものじゃないから、良かったのかも……なんて思いつつ。
「今夜は、どうしよっか」
「あ、そう……だね」
……今夜は……
考えただけで、心臓がバクバクする。
私は、明日までお休み。
涼太は、夕方から少し練習がある。
朝まで、一緒に居たいけど……
「……明日も練習だし、今日はもう帰った方がいいんじゃない?」
車を運転すれば肉体的にも精神的にも疲労するし、一緒に居れば、多分……する、し。
今日、ゆっくり休んで明日からの練習に備えた方がいいだろう。
彼はスポーツ選手だ。
身体を第一に考えなきゃ。
……こころに浮かぶ我儘は、見ないふり。
「……んー……ちょっと考えとくっスわ」
気を悪くしてしまっただろうか。
涼太はそう言ったきり、もうその話題が上る事はなかった。