第77章 共栄
まるで、全力疾走を終えた時のような疲労が全身へ染み渡る。
でも運動した時の爽快感とはまた違う幸福感があって。
手早く処理を終えてから、上下する肩を落ち着かせ息を整えると、目の前にあるつややかな髪をすんすんと嗅いだ。
「ちょっ……涼太、私、汗臭いから」
「んー、全然」
あー……落ち着く。
みわの香り、柔らかい身体。
色々思い出す……短い期間だったけど、一緒に住んでた時の事とか。
あの時も、何回も何回も抱いた。
みわの身体を開発したのはオレだ。
最初は、奥まで突くと少し苦しそうにしていたのに、今ではすぐにイッちゃうし。
どこまでも真面目で冷静なみわ、オレに抱かれてる時は、あんなに余裕がなくて。
涼太涼太って、可愛い声で啼くんスよね。
そんな事を考えて再び熱を持ち始める下半身を笑いながらも、みわをゆっくりと腕の中に抱いた。
何度も、名前を呼び合った。
名前を呼んで、手を繋いで、名前を呼んで、キスをして、触れ合って。
もう、お互いがなくてはならない存在だ。
こうして一緒に過ごすたびに、痛感する。
そのうちにみわは、泣きそうな顔をしてオレの胸に顔をうずめて、「だいすき」と漏らした。
セックス中の事については、何も語らなかった。
それでいいんだと思う。
オレの気持ちも、みわの気持ちもちゃんと伝わったと思うから。
そこからほんの少しだけ、ふたりで眠った。
朝ご飯は旅館側が気を遣ってくれたらしく、時間は過ぎてしまっていたけど、優しそうな女将さんが後から持って来てくれた。
朝から豪華な食事に舌鼓を打ち、チェックアウトまでまだ余裕がある事を確認すると、ふたりでまた露天風呂に入った。
「……あ、雪だよ、涼太」
ちらちらと目の前の景色を気まぐれに隠すように、白い雪が舞い始めていた。
それは、なんとも言えない幻想的な光景で。
すぐにやんでしまったけれど、オレたちを祝福してくれているような、そんな気がした。