第22章 夏合宿 ー4日目・ふたりの夜ー
「……ん」
カーテンの隙間から陽の光が漏れている。
朝だ……
私昨日、いつ寝たんだっけ……覚えてない。
あれ、何も着てない……?
……!
夜を思い出して、顔が熱くなる。
え、覚えてないって私、途中で寝ちゃった?
……でもちゃんと黄瀬くんも出してたの覚えてるし……私もいっ……ってあああ出してたって何言ってんの私!
頭が覚醒してくると、ようやく自分とは違う体温を背中に感じていることに気付いた。
後ろから抱きしめられていて、髪に寝息がかかるのを感じる。
昨日まであんなに不安で、絶望的な気持ちだったのに、遠い昔の事のような気さえした。
黄瀬くん、大好き……。
私の腰に触れている手に触れると、あったかい。
……あれ、黄瀬くん、部屋に戻らなかった、ってことだよね?
大丈夫だったのかな……
「……ん……みわっち……おきた……?」
ちょっと気怠げな、甘い声。
「……うん……お、……きたよ」
うわ、なにこの声。
かすれてる。
「……みわっち、声嗄れてる……昨日あんまり声出せなかったのに……大丈夫? 風邪引いちゃった?」
「わかんない……乾燥してるのかな。口開けて寝てたのかも……けほっ。すごいダミ声で恥ずかしいねこれ」
「ウウン、貴重。かわいー。喉、痛くない?」
「うん、大丈夫……」
首元を優しくさすってくれるその手の動きにゾクゾクしてしまう。
やだ、朝から何考えてんの。
「黄瀬くん……なんか喋って」
「ん、なんかって? どーしたんスか?」
「声、聞いてたいから……」
背を向けてるから言えるけど、面と向かったらゼッタイ言えない。
「なーに? ……みわっち、耳元で話すと感じちゃうんスよね?」
「……っ」
分かってて耳元で囁くんだ。
いじわる。
昨日も黄瀬くんの声と言葉が引き金になって、一気に気持ちよくなってしまって……
「みわっち、こっち向いて顔見せてよ」
「えっ、やだ」
「なんで? 真っ赤だから?」
「ちょっ……耳元で喋っちゃだめ」
「……お姫様は注文が多いっスねえ」
髪を梳かされるだけで気持ちよく感じるのは、私、なんかおかしくなってしまったのか。
「……みわっち」
こんな甘い黄瀬くんを知ってしまったら、もう戻れないよ……