第77章 共栄
なんだ、太陽が顔を出すのはもう少し後だと思ったのに。
昨日はなんも見えなかったけど、山々に囲まれてるだけじゃなくて、川まで見える。
流石に、露天風呂からの景色がウリと言うだけあって、なかなかの絶景。
オレに文学的な表現なんて出来るわけなくて、多分コレ、日が昇る瞬間って、なんかすげーキレイそうとしか言えないんだけど……
やっぱ、みわと見たいな。
起こしちゃ可哀想かな。
一旦上がるかな。
迷いながらも浴槽の縁に手を掛けて、立ち上がろうとしたその時。
ちゃぷん。
背後から聞こえた、ささやかな水の音。
オレの身体にぶつかる、波紋。
少し水かさが増えて、浴槽から溢れるお湯。
振り向こうとしたら、背中にぴとりと柔らかい感触を感じた。
「……おはよ、みわ」
「おはよう……」
まさかの展開に頬が緩みまくる。
何、なんで? みわの方から来てくれるとか、何このレアなの。
クリスマスプレゼント?
サンタさん、クリスマスプレゼントっスか?
「嫌な夢見なかった?」
「うん、夢、見ないくらいぐっすり寝ちゃった。わあ……!」
山と山が重なってる間のトコから、昇って来たのは丸くて一際大きな光。
金色みたいな、黄色みたいな、オレンジみたいな、とにかく強く優しい光が、少しずつ世界を照らし始める。
オレたちの後ろの影は、色を濃くしているだろう。
「すげ……」
「キレイ……」
1日の始まりを、みわと見られて良かった。
1人でいる時には何にも考えないで過ぎてしまう1分だけど、みわと過ごす1分はものすごく大切で。
あっという間に過ぎてしまうような、永遠のように長く感じられるような、不思議な感じだ。
ずっとこうやって寄り添ったまま、一緒に過ごしていたい。
「涼太……」
くいくいと腕を引く感覚に、振り向くと……そこにはなんとも言えない表情をしたみわ。
最高のクリスマスの始まりだ。
彼女の願いを叶えるように、ゆっくりと唇を重ねる。
熱くなっていく身体の芯とは裏腹に、それはひんやりと冷たかった。