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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第77章 共栄


なんだ、太陽が顔を出すのはもう少し後だと思ったのに。

昨日はなんも見えなかったけど、山々に囲まれてるだけじゃなくて、川まで見える。
流石に、露天風呂からの景色がウリと言うだけあって、なかなかの絶景。

オレに文学的な表現なんて出来るわけなくて、多分コレ、日が昇る瞬間って、なんかすげーキレイそうとしか言えないんだけど……

やっぱ、みわと見たいな。
起こしちゃ可哀想かな。
一旦上がるかな。

迷いながらも浴槽の縁に手を掛けて、立ち上がろうとしたその時。

ちゃぷん。

背後から聞こえた、ささやかな水の音。
オレの身体にぶつかる、波紋。
少し水かさが増えて、浴槽から溢れるお湯。

振り向こうとしたら、背中にぴとりと柔らかい感触を感じた。

「……おはよ、みわ」

「おはよう……」

まさかの展開に頬が緩みまくる。
何、なんで? みわの方から来てくれるとか、何このレアなの。
クリスマスプレゼント?
サンタさん、クリスマスプレゼントっスか?

「嫌な夢見なかった?」

「うん、夢、見ないくらいぐっすり寝ちゃった。わあ……!」

山と山が重なってる間のトコから、昇って来たのは丸くて一際大きな光。

金色みたいな、黄色みたいな、オレンジみたいな、とにかく強く優しい光が、少しずつ世界を照らし始める。

オレたちの後ろの影は、色を濃くしているだろう。

「すげ……」

「キレイ……」

1日の始まりを、みわと見られて良かった。

1人でいる時には何にも考えないで過ぎてしまう1分だけど、みわと過ごす1分はものすごく大切で。
あっという間に過ぎてしまうような、永遠のように長く感じられるような、不思議な感じだ。

ずっとこうやって寄り添ったまま、一緒に過ごしていたい。

「涼太……」

くいくいと腕を引く感覚に、振り向くと……そこにはなんとも言えない表情をしたみわ。

最高のクリスマスの始まりだ。

彼女の願いを叶えるように、ゆっくりと唇を重ねる。

熱くなっていく身体の芯とは裏腹に、それはひんやりと冷たかった。


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