第77章 共栄
「そう言えば……今日、予報では雪って言ってたけど」
「ああ、そうだったっスね。でも思ったより気温も下がってないし、降らないかもしんないっスね」
ホワイトクリスマス……ならなかったなあ、残念なんて考えて、ふと気づく。
「車だから……雪降ったら危ない、よね?」
ミーハー気分で雪が降って欲しいなんて思っちゃったけど、もしかしたら立ち往生になってたかもしれない。
「一応スタッドレス履いてチェーン積んで来たけど、慣れてないから積もらないに越したことないっスわ」
「……うん、そうだよね」
そっか……涼太はちゃんと、ずっとこの日の計画を立てていてくれたんだ。
なんか、凄く嬉しい。
涼太、忙しいひとなのに。
少しでも、私が出来ることでお返ししたい。
「涼太、マッサージしていい?」
「何言ってんスか。ダメに決まってるでしょ」
まさかの即答。
さっきまでの、はちみつのような甘さなんて全くない厳しい言葉での拒絶。
「だって、ずっと運転して凝りとか張りが」
「みわ」
「う……」
この状態の涼太を説得出来た試しがない。
涼太は、手を繋いだまま私に覆い被さってきた。
あ、やっぱり……する、のかな……?
そう思ったけれど、涼太はそれ以上動かない。
少しだけかけられた体重。
暖かい身体が重なって、心地良い。
「眠くないんスか?」
「うん、だいじょ……」
大丈夫だよ、そう言おうとした矢先に、湧き上がってくるあくび。
噛み殺そうとしたけど、バレバレで。
涼太も笑ってる。
「ほら、じゃあちょっと寝たら後でやって貰うっスわ」
でもでも、寝る前にちゃんと……
そう反論しようとしたのに、もう瞼が重い。
眠い。
普段、こんなに眠くなる事ってまずないのに……。
寝なきゃ寝なきゃって、頑張って寝てるのに。
「……みわ、眠い?」
遠くから涼太の声が聞こえる気がするけど、夢? それとも現実?
「ねむく、ない」
って言ったと思うけど、夢か現実かもう、分かんない。
折角の、折角のクリスマス。
ふたりきりの時間。
してあげたい事、いっぱいある。
寝たくないよ……。