第77章 共栄
みわからのプレゼント。
手編みのスヌード。
どんなアレンジでも出来るように、しっかりとした長さがある。
ベストにも出来るくらいだ。
手編みと聞いて、嬉しさよりも驚きよりも何よりも先に思ったのは……いつこんな時間かかるモノ編む時間があったんスか? ってことだ。
いや、聞かなくても分かる。
みわにそんな時間、無い。
本当にいつもビックリするほどスケジュールをギッチリ詰めて、息つく暇もないくらいに動いてる。
講義以外の空いてる時間は全てバイトにあてて、家に帰れば寝るまでひたすら勉強。
そんな中、恐らく睡眠時間を削って作ってくれたんだろう。
みわは決して器用なタイプじゃない。
むしろ、不器用な子。
調べながら、一所懸命作ってくれた?
編みながら、オレの事考えてた?
みわの貴重な貴重な時間を使って、これを。
それは、物だけじゃなくて、みわの時間までプレゼントしてくれたってことだ。
もうなんか、たまんない。
胸が、痛い。
嬉しいとかいう表現じゃ足んない。
こんな事滅多にないけど、言葉が、出てこない。
出てこなくて、それでもこの気持ちを表したくて、みわを抱きしめようと手を伸ばすと、包みの中からひらりとカードが出てきた。
"メリークリスマス!
涼太、いつもありがとう。
寒さに負けず、頑張って!
みわより"
可愛いトナカイがサンタの乗ったソリを引いているクリスマスカードに書かれた、綺麗な字。
サンタが海常のカントクに似てる。
緊張しているのか、いつもよりも線が硬い。
手書きのメッセージ、こんなに嬉しいもんなんだなって、みわに教えて貰った。
「あっ、あのね、無理して使わなくても大丈夫だから! 受け取ってくれただけで満足っていうか、ほら私、センスないし」
口下手なクセに、アワアワせっせと話す姿が可愛い。
ヤバい。
やっぱり、全部好きだ。
みわが好きで好きで、どうしようもない。