第77章 共栄
「これ……ネックウォーマー?」
涼太が取り出したのは、そう、ネックウォーマー。
長めで、輪っかになってるの。
「あ、スヌードにもなるヤツだ、便利っスね」
「あの、涼太はそういうの、沢山持ってるかなと思ったんだけど、あんまりピンとくるものがなくて……」
黒・グレー・白の段染めになっている毛糸。
差し色として、所々に赤が入っている。
「いや、持ってないっスよ。撮影とかで使っても、あんま気に入るのなくてさ。これ、色もカッコいいし、好きっスわ。
マフラーは風とかで崩れるからウザいんスよね」
二重にしたり、角度を変えて巻いたり……私は二通り位の使い道しか知らなかったのに、涼太は次々とアレンジしていく。
「肌触りもすげーいいし! 使いまくるっスわ、ありがと、みわ!」
満面の笑みでそう言ってくれる彼の優しさに、胸が熱くなった。
こんなの、大したものじゃなかったのに。
色々考えてくれた涼太のプレゼントに比べたら……。
「これ、洗濯は手洗いで出来るんスかね?」
「あ、うん、手洗いで大丈夫だよ」
涼太は、首から外したそれをめくりながら、洗濯表示のタグを探している。
「あれ、タグ無いんスね。もしかして先に切ってくれた?」
「あ……えっと……タグはね、無いの」
「ん?」
その、おひさまのような晴れ晴れとした笑顔を向けられると……言い辛い。
「あの、……だから」
自分でも驚くほど小さな声になった。
「ん、ごめん、もっと大きな声で言って?」
「……それ、編んだ、やつだから」
「へ」
わ、引いた!? 引いた!?
引くよね!? 手編みとかいつの時代だよって感じだよね!?
どうしよ、どうしよう。
やっぱりお店で立派なのを探せば良かった。
どうして私はいつも、考え無しなんだろう。
「みわが、編んでくれたんスか?」
「…………う、ん」
こんな安っぽいもの、プレゼントしてごめんなさい。