第77章 共栄
倹約家のみわと、自分が決めた事にはパーッと使いたいオレ。
事前に言ったら、絶対遠慮すると思って、ほぼ無理矢理連れてきた。
全室客室露天風呂付き。
もうこれしかない。
手を引いて連れてきたサンタさんは、固まっている。
そもそもなんだよこのワンピース。
彼女には珍しいワインレッド。
胸元に黒いベロアのリボンがあしらってあって、まるで彼女自身がプレゼントだ。
可愛すぎでしょ!
「行こ、みわ」
絶対に拒否されるよなあ。
分かってるけど、やっぱりイチャイチャしたい。
そう、絶対に拒否される、と思ったのに。
どもりながらも、室内の洗い場で1人で先に洗わせてくれるなら、という、つまりは"オッケー"の返事で驚いた。
ガラス扉を開けて、頬を打つ冷気に身を震わせていると、視界に入ってきたのは浴槽の端っこで膝を抱えて座っているみわの姿。
「どう?」
「うん、気持ちいいよ……檜のいい香りがするの」
「ほんとだ、いいニオイっスね」
湯の香りと共に、木の匂い。
なんか、癒される。
四角い檜風呂に足をつけると、普段よりも高い温度のお湯に驚いて一瞬足を引っ込める。でも、外気温の低さに、それも段々と気にならなくなってきた。
ざぶんと身体を沈めると、顔は冷たくて身体はあったかい。
溜まっていた疲れが溶け出るようだ。
「はー……サイコー」
「最高の贅沢だよ……」
そう言いながらも、みわは体育座りをしたまま、隅で小さくなっている。
「端っこで何してんの、みわ」
「え、いや、うん、大丈夫」
「ぷ、何が大丈夫なんスか」
動揺しまくっている姿が可愛くて。
みわの身体は、もう隅々まで見てるっスよ。
「外は真っ暗っスね」
多分、昼間なら山の自然がよく見えるんだろうけど……夜は何にも見えないな。
でも、目的はそれじゃないから、いいか。
浴槽の端に付いている電灯を、パチリと消した。
辺りが暗くなって、洗い場と繋がっている扉からぼんやりと漏れる明かりだけになる。
「ほら、これなら見えないっスよ」
少し戸惑うみわの細い身体を、抱き寄せた。