第77章 共栄
突然舞い込んで来た話。
久々に名前を聞いた、マクセサンからの連絡。
オレが、日本代表メンバー入りって。
マジで?
驚きと、それを上回る喜び。
それと同時に頭に浮かんだのは……大切なヒトの顔。
そして、彼女と出来る物理的な距離。
自分でもネットで過去の代表メンバーのスケジュールなんかを調べてみたりして。
シーズンオフになれば、それなりに時間は取れるかもしんないけど……。
折角免許を取って会える機会を、なんて思っていたのに。
いや、でもCMの話なんかも聞いたりして、やっぱり取っておいて正解だったとも思った。
みわと街中でふたり、手を繋いで歩く……そんな些細なことすら困難になるのだろうか。
みわの柔らかい背に突き立てられたナイフ。
まだハッキリと思い出すのはあの姿。
もう絶対、あんな目には遭わせない。
罪悪感とか、不安とか、期待とか……様々な感情が頭に渦巻いて、手放しで喜ぶ事は出来なかった。
それなのに。
「おめでとう、涼太!」
目の前に咲いた笑顔の華は、眩しくて。
そこには、なんの余計な感情もなくて。
"私とバスケ、どっちが大事なの?"とか思わないの? なんて聞こうものなら、「聞かないよ。涼太のバスケの方が大切だもの」とアッサリ返って来そうな顔。
純粋に、オレの事だけ。
その真っ直ぐなお祝いの言葉に、胸が締め付けられるみたいだ。
少ししてから、ぽろぽろと大きな瞳を濡らす涙。
「ごめんなさい……驚いて、感動しちゃって」
なんでそんなに可愛いの?
良かったね、良かったねと泣く姿が、もうたまんない。
「私ばっかり……貰っちゃって、どうしよう。クリスマスプレゼント、大したもの用意してないのに……」
ぐしぐしと鼻をすすったオレのサンタさん。
オレのそばに居てくれるのが1番のプレゼントなんだって。
そう思ってるけど、近くに居られない原因を作ってるのはオレ自身で。
もう、ぐちゃぐちゃだ。