第77章 共栄
「凄い、きらきらしてる……」
箱ごと傾けると、部屋の明かりでもキラキラ、キラキラと光が乱反射して輝く石。
「ああ、ごめんねダイヤはちっちゃいんスけど」
ひっ、ダイヤ!?
これも!? また!?
いけない、つい綺麗さに目を奪われてしまったけど、そんな事してる場合じゃない!
「涼太! こ、こんなの貰えないよ!」
いくらするのか、もはや想像もつかない。
おまけに、ペアモデル。
2つも買ったら、一体いくらに……
ぶんぶんと顔を左右に振る私に、涼太は寂しいような……少し悲しい笑顔。
「お揃いにしたかったんスよ、ダメ?」
どうしてそんな顔、するの?
「じゃ、じゃあ私、涼太の分を払う!」
「みわ」
その固い声音と、真っ直ぐな視線に、これ以上の議論はやめて欲しいという意思が現れているよう。
「……涼太」
「ずっと一緒に居られなくても、同じ空の下で、同じ時を刻みたい……って、これ見るたびにそう思えるって思ったんスわ」
ゆっくり時計をケースから外し、そのまま私の左手首に巻き付ける。
パチン、というバンドを留める金具の音が高く響いて、静寂が訪れる。
涼太はすぐに、自分の分も取り出して、装着した。
「ごめんね。みわ。きっと、こうやってのんびりイベントを過ごすの……今後はしにくくなるかと思ってさ」
今後……?
確かに、3年生になったり、卒業が近くなればまた忙しくなるし、試合の前はいつも通り、練習や合宿漬けだろう。
でもそんな事、改まって言う必要ある?
そして、どうして今?
「ホントにオレの勝手な都合だし……みわを振り回すような事はしたくねーんスけど……」
何?
なんか、嫌な雰囲気だ。
今日1日振り回されたのとは違う種類のドキドキ。
「どうし……たの?」
声が掠れた。
咳払いして治す雰囲気ではない。
涼太は、少しの間テーブルを見つめて……口を開いた。
「オレ、全日本の代表メンバー入りが決まった」