第77章 共栄
さくっ、枯葉を踏みしめながら、車への道を手を繋いで歩く。
所々土が湿っていたりしているから、うっかり滑らないように気をつけながら。
思ったよりもすぐ、車へ戻って来れた。
行きよりも、帰りの方が距離が短い気がするのは、気のせいかな?
「涼太、行きたかった場所、行けなくてごめんなさい。それに、夕食……」
「ん? いいんスよ、これを見に来るための時間潰しみたいなモンだったから。メシはこれから行くっスよ」
「え、でも宿は」
「ああごめん、言ってなかったから心配させちゃったんスね。今晩は宿じゃなくて外で食べるつもりだったんスわ」
良かった。そうだったんだ。
車の中へ入ると、遠くに聞こえていた虫の声も、耳に届かなくなる。
エンジンがかかると、車内に音が生まれて、ホッとした。
あんまりにも静かだと、心臓の音が聞こえちゃうかもしれない。
ちらり、横目で涼太を見る。
うう……格好いい。
まだ卒業して1年も経っていないのに、なんだか涼太はすっかり大人で。
いつまでも子どもじみた自分が恥ずかしい。
夕食は、近くのレストランで食べた。
予約してあった席から湖が見えて、さっきの景色が思い出されるようで、ずっと胸が熱かった。
レストランを出て、駐車場に向かおうとする涼太を制止する。
「りょ、涼太、お金!」
「ん〜? いらねっス」
さっきから、涼太は一切お金を受け取ってくれない。
私がトイレに行っている内に、とか、彼がトイレに立った時に、とか……いつの間にかお会計が終わってしまっている。
私だって、一応バイトもしてる。
出して貰ってばかりいるわけにはいかないよ!
「ねえ涼太、ホントに! 私にも払わせて、奢って貰ってばっかりはダメだよ」
また、お嬢様のように助手席のドアを開けてくれるけど、話を受け入れてくれる気配はなし。
「涼太、だって……」
涼太が運転席に乗り込んですぐ、話しかけた。
でも……返ってきたのは、返事ではなくて、柔らかい口づけ。