• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第77章 共栄


さくっ、枯葉を踏みしめながら、車への道を手を繋いで歩く。
所々土が湿っていたりしているから、うっかり滑らないように気をつけながら。

思ったよりもすぐ、車へ戻って来れた。
行きよりも、帰りの方が距離が短い気がするのは、気のせいかな?

「涼太、行きたかった場所、行けなくてごめんなさい。それに、夕食……」

「ん? いいんスよ、これを見に来るための時間潰しみたいなモンだったから。メシはこれから行くっスよ」

「え、でも宿は」

「ああごめん、言ってなかったから心配させちゃったんスね。今晩は宿じゃなくて外で食べるつもりだったんスわ」

良かった。そうだったんだ。

車の中へ入ると、遠くに聞こえていた虫の声も、耳に届かなくなる。

エンジンがかかると、車内に音が生まれて、ホッとした。

あんまりにも静かだと、心臓の音が聞こえちゃうかもしれない。
ちらり、横目で涼太を見る。
うう……格好いい。

まだ卒業して1年も経っていないのに、なんだか涼太はすっかり大人で。
いつまでも子どもじみた自分が恥ずかしい。

夕食は、近くのレストランで食べた。
予約してあった席から湖が見えて、さっきの景色が思い出されるようで、ずっと胸が熱かった。

レストランを出て、駐車場に向かおうとする涼太を制止する。

「りょ、涼太、お金!」

「ん〜? いらねっス」

さっきから、涼太は一切お金を受け取ってくれない。
私がトイレに行っている内に、とか、彼がトイレに立った時に、とか……いつの間にかお会計が終わってしまっている。

私だって、一応バイトもしてる。
出して貰ってばかりいるわけにはいかないよ!

「ねえ涼太、ホントに! 私にも払わせて、奢って貰ってばっかりはダメだよ」

また、お嬢様のように助手席のドアを開けてくれるけど、話を受け入れてくれる気配はなし。

「涼太、だって……」

涼太が運転席に乗り込んですぐ、話しかけた。

でも……返ってきたのは、返事ではなくて、柔らかい口づけ。

/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp