第77章 共栄
ぽかぽか、ぽかぽか。
足先が温まると、不思議と全身が温まってくる。
「あ、このチーズ美味いっスね」
「ほんと、美味しい」
「お土産に買ってこっかな〜」
美味しい焼き立てのパンやピザを食べながら、涼太と他愛もない話をするこの時間が、何よりも楽しい。
大好き。
……彼の姿を見ているだけで、身体が熱くなる。
ううん、これは足湯のせいだもん!
でも……身体がぽかぽかすると、普段絶対に訪れないような眠気が訪れてくるのを感じる。
気付かれぬよう、湧き上がってきたあくびをこっそりと噛み殺した。
「みわはさあ」
外はパリッ、中はふわふわの焼き立てクロワッサンをひとくち齧って、涼太は問いかけてきた。
柔らかい微笑みと共に届けられるのは、バターの香ばしい香り。
「なあに?」
私は、よもぎパンをひとくち。
口中にふわりと広がる甘みのある風味。
「星の、どこが好きなんスか?」
「星……星空の星?」
「うん。みわ、好きじゃん、星」
星、大好き。
でも、こんなに好きになれたのは……涼太の影響だ。
「うん……涼太と見た、プラネタリウムとか……星空が、あまりに綺麗でね、最初に見た時、本当に驚いたの」
無数の星たちが、真っ黒の夜空のキャンバスで、きらきら瞬いて。
「今までね……空にお星さまがあるって事すら、忘れてたの。上を向くことって、なかったから。下を向いて、涙を堪えてきたから」
毎日が辛くて辛くて……言葉にしてみたら、ほんの数年前。
あの時の私は、未来にこんな生活が待ってるなんて事、想像すら出来なかった。
私の希望……涼太と出逢えて、全部変わった。
彼はまるで、真っ暗な絶望の中できらきら光る星のように、私を照らし、導いてくれる。
いつしか、涼太を好きになるのと同じように、夜空に煌めく星を好きになっていったんだ。