第77章 共栄
「そちらのお品、限定品ですぐに完売してしまったんですよ。私も、実際につけていらっしゃる方を拝見するのは初めてです」
「そうなんですか……」
限定品。
そうだったんだ。
私、全然知らなかった。
目の前のショーケースに、少し似たデザインのネックレスが飾ってある。
「こちらが秋冬モデルでございます」
値札を見て、ギョッとした。
ゼロの数が、予想よりも多い。
ネックレスって、こんなにするの!?
私のネックレスは、ハートのペンダントトップの中にキラキラした小さな石が散りばめられていて、その内のひとつがピンク色になっている。
オシャレで可愛いな、くらいにしか思っていなかったのだけれど……
「お客様のネックレスは、一部がピンクダイヤになっているんですよね」
「だ、ダイヤ!?」
ダイヤって……ダイヤモンド!?
このネックレス、ダイヤが使われてるってこと!?
おまけにピンク?
ダイヤってピンク色もあるの!?
ダイヤの相場なんてものも分からないけど、このキラキラする石の事、じゃあ何だと思ってたんだと言われてもうまく説明出来ないんだけど、とにかく涼太に貰ったこれは、こんなに高価なものだったんだ!
ううん、なんだか高そう、と薄々気付いていた。
一緒に付いていた箱は重厚感があったし、ああもうとにかく、こんなにボケッと貰っていい物じゃなかったんだ!
どうしよう、どうしたらいいの?
でも返品なんて……失礼だ。
お金が返ってくるわけじゃない、だろうし。
「お客様、とてもお綺麗な指をしていらっしゃいますね。こんな指輪はいかがですか?」
「え、いえ、あの」
「サイズは7号……が一番合いそうですね」
「あの、あの」
アワアワとしている私に、背後から声がかかった。
「みわ、お待たせ」
「……涼太」
「行こっか」
すっと肩を抱かれて、出口の方へ誘導される。
色々お話を聞かせてくれた店員さんに会釈を返すと、彼女は恭しく頭を下げた。
店員さんから涼太に掛けられる、
「申し訳ありませんでした」の声。
……なんの用事だったんだろう?
お買い物じゃ、なかったのかな……。