第77章 共栄
いいなあ、涼太と同じ学校。
なんて、笠松先輩たちにヤキモチ妬いたりして。
いつもこうして、涼太の事、見ていたいなぁ……。
「でも助手席に乗るのはみわが初めてっスよ」
「え……そうなの?」
「最初に助手席に乗せるのはみわって決めてたっスからね。センパイ達もそこは分かってくれたし」
「そ、そうなんだ」
……なんて説明したんだろう。
いや、涼太の事だから、包み隠さずそのまま話したに違いない。
なんとなく気恥ずかしくて、でも嬉しくて、それ以上は返せなかった。
「あ、ココ、ココ」
そう言うと、"P"の表示がある看板を見ながら、路地に入っていく。
どうやら、お店が見つかったらしい。
咄嗟の事で、建物を見損ねてしまった。
お店の裏手が駐車場になっているようだ。
速度を落とした車が駐車場に入っていくと、車は一旦停止して、涼太がレバーをガチャリと切り替える。
車の事なんて全然分からない私、何気なくぼんやりとその様子を眺めていると、涼太が突然、私のヘッドレストに手を掛けた。
え、何!? キス!?
急な事にアワアワとしていると、車はゆっくりと後退を始める。
涼太の視線は、後ろへ向けられたまま。
……駐車するために必要な行為だった、ってこと?
え、何これ、バックするのにこんな事するの?
ちょ、ちょっと、心臓が止まりそうなんですけど……!
顎のラインが色っぽい……更にそこからの喉仏が、なんてマニアックな事を考えてしまう妄想脳を一喝して、精神統一を図る。
今日は邪な事ばっかり考えてる。
落ち着いて。今日は楽しいクリスマス。
涼太がまたレバーを切り替えると、ピーピーと車内に響く機械音がおさまり、車内に静寂が訪れる。
なんか、駐車って何回も切り替えたりするイメージだけど……
「すごいね、1回で、っ」
重なってきた唇は、彼らしくなく少し乾いていて、熱い。
更に熱く湿った舌が侵食してくると、ここがどこかなんて分別はあっという間に取り去られていった。