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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第77章 共栄


「あ、の……免許、取ったんだね」

こうして運転しているんだから、当たり前なんだけど。
なんか、不思議すぎて。
こうして彼の隣に乗っているのが。

「ああ、前に駅前でチラシ見つけてからずっと気になっててさ。合間合間で通ってたら半年くらいかかっちゃったんスわ」

半年くらい……って事は、涼太のお誕生日に会った時には既に通い始めていたんだろうか。

内緒にしていたのが、彼らしい。
でも……

「……筆記試験、受かったんだね」

「ぶは、そこ!? 超マジメに頑張ったんスよ!」

学校もあって、バスケもバイトもあって、いつそんな時間があったんだろう。
また、無理していたに違いない。

私との時間のために……。

じわり、また目の前が滲んでくる。
良かった、涼太が運転してて。
気付かれずに済む。
どうか、赤信号にならないで。

その願いもむなしく、1つ先の信号は赤。

「心配、いらねえスよ。オレが取りたかった……みわと一緒に居たかっただけだから」

今まででいちばん、優しいキスだった。




景色が、都市部のものへと変わってくる。
嫌な記憶を呼び起こす、同じ形の雑居ビル群。
ヒトに見られる事を意識して造られたファッションビル。
綺麗だけど、冷たくて無機質。
この世界に触れていると、気付かぬ内に、ひとも冷たくなってしまう気がする。

街中を走る車も、高そうなものばかりになってきた。
この車と同じエンブレムの車も、よく見かける。

「……それにしても、外車って。すごい」

「国産車より安く譲って貰えたから、ラッキーだったっス。これで、終電とか電車遅延とか気にしなくていいしさ」

淀みなく運転する姿は、免許取り立てというよりもむしろ、長年乗っている貫禄のようなものさえ感じる。

「普段、乗ってるの?」

「一応車買ってからはなんだかんだ、毎日乗ってるっスよ」

道理で。
持ち前の器用さもあるんだろうけれど、安心して乗っていられるような雰囲気。

「えと……ひとり、じゃないよね?」

「うん、笠松センパイと小堀センパイがよく乗るっス」

知ってる名前の羅列に、ホッとする。
もしかして、同級生の女の子とか……とか思った自分が恥ずかしい。



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