• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第77章 共栄


「……なぁんて、ね」

「……へ」

ペロリと私の下唇を舐めた彼のその表情は、いたずらした子どものそれだ。

左胸を触っていた手も、何事もなかったかのように離れ、トントン、と突っついたのは……心臓。

「ヘンな事されてないなら、いいんス」

バクバク、心臓はまだ騒いでいる。
なに? 今の、悪ふざけ?
び、び、びっくりしたぁ〜……。

「さ、行くっスよ。シートベルトしてね」

「は、はい」

さっとシートベルトをする姿が、様になっている。

その動きにもうっかり見とれてしまい、自分のシートベルトが疎かに。
焦って勢い良く引っ張ったら、ストッパーがかかったみたいにベルトが出てこなくなってしまって、また笑われながら手伝って貰った。





緩やかに流れていく景色。
土地勘がないから、どの辺りを走っているのかは見当もつかない。
ちらり……隣には、運転している涼太。

だめだ、全くもって集中出来ない。

左右を見て、サイドミラーに目をやって、バックミラーを見て。
そんな些細な動きですら、心臓を止める要因になりかねない。

だって、格好良すぎて。

ハンドルを回す、ハンドルを握ったまま中指と薬指でウィンカーを出す……もうひとつひとつの動作が、格好良い。

そして、信号で停車すると……時々不意打ちのようにキスをされる。

「みわ、赤いワンピース、可愛いっスね」

「え、あ、ありがとう」

こちらにちらりと横目で視線を流して、また前を向く。

涼太の一挙手一投足に、胸がうるさいくらいドキドキして。

「クリスマスにピッタリ。似合ってるっス」

その一言で射抜かれる。

大通りに出た。
周りはまだ、下町の風景。
交差点にある大きく青い看板に、行き先が書かれてる。

車は新宿方面へ向かっているらしい。

「楽しい1日になりそうっスね」

まだこんなに明るいのに、私、今からこんなんで、1日もつのでしょうか……。


/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp