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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第77章 共栄


「ん? まだ行きたくない? 部屋でシてから行くっスか?」

「ちょっ」

頭頂部でスンスンと鼻を鳴らしたと思ったら、ちゅ、と額から頬へと下りてくるキス。
み、皆が! 皆が居る前で!

「ちが、ちがちが違うの! 電車、止まっちゃってるのにどうやって行くの? タクシーじゃ、お金かかっちゃうよ」

「ちがちが?」

涼太は吹き出して笑ってるけど、状況は変わってない。

私が指差した先、リビングのテレビ画面の中は、相変わらずの火災風景。
鎮火にはまだまだ時間がかかりそう。
怪我人は出てないみたいで、良かった。
続いて、混乱が収まらない都市部駅構内の映像。
既に何万人にも影響が出ている。

「あー、電車止まってたんスか」

「え?」

止まってたんスか、って、知らなかったの?
どういうこと?

「黄瀬、あんたどうやって来たわけ」

「ん? 車っスけど」

……車?
と言うことは?

「え、お姉さんに送って貰ったの? 今、お待たせしてるってこと?」

引越しの時ぶりだ。
あの時はゆっくりお話も出来なかったし……。

「いや、オレの車だけど」

「ほ?」

「もーさ、さっきからみわの反応が面白すぎっス。ま、行こ行こ」

「えっ、あっ? え、ええ?」

涼太は、左手で私の腰を支えたまま、さっと右手で私の鞄とコートを持って、その鮮やかな動きに驚く暇もなく廊下まで連れて行かれる。

「ごめんね、黒子っち。2人とも、メリークリスマス」

涼太はそれだけ言って、もう振り向かなかった。

「黄瀬君、みわさん、……メリー、クリスマス」

教会の神父様のような優しく静かな声が、返ってきた。







「あんなにバチバチやり合ってたのに、意外にもアッサリ諦めたのね」

「……黄瀬君が、あんまりにも幸せそうに笑うので」

「なんだかんだ、あんたもお人好しか。悪いけどあたし、夕方からデートだからね。シングルベル、楽しんで〜」

「……あきさんはもっと、オブラートに包む事を覚えましょうか」

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