第77章 共栄
「冗談じゃねえなら、余計悪いっスわ」
睨み合っているのか、涼太から溢れる言葉にも温度がない。
冷戦、とかじゃない。
掴みかかりそうなくらいの熱を感じる。
どうしよう、どうしよう。
「あれー、黄瀬じゃん」
突然涼太の背後から聞こえてきたのは、あっけらかんとしたその声。
「……あきサン」
「何あんた、どーやって来たの」
ガサガサ、重いビニール袋を持っている気配。
あき、お買い物終わったんだ。
良かった……
「ごめんあきサン、今取り込み中なんス」
「あー、そうみたいね。退散するわ」
え、ええっ!!
頼みの綱、あきはあっさりと家の中に入ろうとしている。
どうしたらいいか分からなくて、待って、って言おうとしたんだけど、上手く言えなくて。
「黒子っち、この際だからハッキリ言っておくっスけど、オレは何があってもみわと離れたりはしないっスから」
「この際だからボクもハッキリ言っておきます。ボクは、諦めません」
どんどん熱を持っていく会話。
絶体絶命、慌てて抱きついている腕を離して顔を上げた。
「あのっ、涼」
ブチッ、カンカラカンカンバサバサバサ。
その大音量に驚いて振り向くと、マンションの廊下に散らばっていくペットボトルや缶、お菓子の袋やらなんやら。
どうやら、ビニール袋の取っ手が荷物の重みに耐え切れず、切れてしまったらしい。
「あっ、だからあの店員、袋分けろって言ったのに! 黄瀬! 黒子! 拾って!」
4人でアワアワと拾い物をしている内に、さっきのギスギスした空気がなくなっていくのを感じる。
良かった……。
「はー助かった。さんきゅね、皆」
買った物を皆でキッチンまで運んで、一段落。
「じゃ、オレたち行くっスわ」
涼太がするりと慣れた調子で私の腰に腕を回した。
「え、行くって……」