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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第77章 共栄




こんなに、リビングって広かったっけ。
こんなに、廊下って長かったっけ。
気が付いたら、無我夢中で走っていた。

途中、足がもつれて転びそうになって、1回すてんと転がって、なんか手のひらが痛くて、後ろから黒子くんが私を呼ぶ声がした気がして、それでも走り続けた。

ピンポーン、再度鳴るチャイム。
そう言えば、画面を見てオートロックを解除しただけで応答せずにここまで来てしまった。

でももう、いい。


ドアを開け放った先には──



さらりと靡く黄の髪が、日光の力を借りてキラキラと輝いて、彼の魅力を倍増させている。

眩しすぎて、直視出来ない。

「おはよ、みわ。なんかスゴイ音がしたけど、大丈夫っスか?」

「涼太……!」

もう、何も考えられなかった。

何日? 何ヶ月? ぶりにやっと見れたその姿が、現実なのか幻なのかももう分からなくて、夢や幻なら、もうこのまま覚めなくていいやって、そう思った。

勢いで抱きついた彼の胸はふんわり柔らかくて、上質なジャケットを着ているんだという事が分かる。

それにしたって、コートは?
12月ももう終わろうという時期に、薄着すぎやしないかな。

「みわ、どうしたんスか……って、え、黒子っち?」

言葉の最後が固くなり、涼太はギュッと私の背中に腕を回した。

「こんにちは、黄瀬君」

追いかけてきた声は、いつもの優しい黒子くん。
振り向けなかった。
勝手に、涼太に抱きつく腕に力が入る。

「……みわに、なんかした?」

しん、まるで雪が積もった日の早朝のように、耳が痛くなるほどの沈黙。

「してませんよ、まだ。これからでした」

「笑えない冗談はやめて貰えねえっスか」

「冗談じゃありません。ボクは、いつでも本気です」

一触即発。
どうしよう。

この2人に、仲違いして欲しくないんだけど……。


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