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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第77章 共栄


ぐい、決して強引とは言えない力加減で掴まれる手首。

絶妙だ。
もっと力強く引かれたなら、同じ位の力で逃げる事が出来るのに。

「くっ、黒子くん!」

逆らえぬまま、廊下を抜けてリビングへ出る。
白壁の明るさが特徴的なリビングの筈なのに、次の瞬間、視界は阻まれた。

黒子くんの胸に。
……抱きしめ、られてる。

「く、く、くろこくん、なに」

「……黄瀬君と約束したんです。貴女に寂しい想いをさせたら、その時はボクが遠慮なくみわさんを貰うって」

「さ、寂しくなんかないよ!」

精一杯の強がりに、目頭が熱くなる。
寂しくなんかない。
だって、仕方ないじゃない。
電車が止まってるのは彼のせいじゃない。
誰のせいでもないもの。

会えるもん。
どうなるかはまだ分からないけれど、絶対に会えるもん。
言葉に出したかどうかは、分からない。
ツンと、鼻が痛い。

「……もう、離しません」

「黒子くん、離して、お願い」

私がドキドキするのは、この胸じゃない。
抱きしめて欲しいのは、あのひとだけだ。

「くろっ」

ピンポーン、とチャイムの音がリビングに響き渡る。

2人とも、びくりと驚いて咄嗟に身体を離した。

「あ、あはは、やだ、あきってば、カギ持って行くの忘れたのかな。おっちょこちょいな所、あるんだから」

無意識の内に饒舌になり、決して振り返る事はせず、インターフォンに小走りで向かう。

あき、ナイスタイミング……なんて思っていたのだけれど。



「……え……」

モニター画面に映ったその姿に、暫く目を奪われてしまった。



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