第77章 共栄
「ところでみわ、何、黒子と知り合いなわけ?」
そうだった。
あきは、バスケの事は全然分からないんだ。
大きな試合は時々観に来てくれてたけど……
「そうだよ。黒子くんは誠凛のバスケ部だったの」
「え、誠凛って、ウチらが1年の時におっきな大会で負けたトコ?」
「……うん」
苦い想い出。
でも、最後に勝った良い想い出も同時にあって。
それなのに、辛い部類の記憶の方が色濃く残っているのは何故なんだろう。
「マジで? あんた、試合出てたわけ?」
……話が長くなりそうだったので、試合の概要やらを簡潔に説明して。
「あんたが最後にシュート撃ったやつ? マジで? 帰れ」
「ちょっとちょっとちょっとあき」
「それは困ります。電車が止まっているので、帰れません」
電車……
そうだった。
黒子くんだって、電車に乗って来たはず。
「そうだ、よくここまで来れたね、黒子くん」
「そうですね、ボクはギリギリだったみたいです。少し早めに家を出たのが正解でした」
そっか……電車、復旧した訳じゃないんだ。
原因不明って言ってたもんね。
数十分で解決するようなものじゃないよね。
パタパタとリビングへ向かったあきが、コートを羽織りながら戻って来る。
「黒子、先始めててー」
「どうしたの、あき」
「お茶もお菓子も切れてたわ。すぐそこのコンビニ行ってくる」
「ボク、気にしませんよ」
「いや、あたしが気にすんの。今日本当に雪になったら、明日外出たくないもん」
いつものように、あきは嵐の如く去って行った。
ぽつん、寒々しい玄関に黒子くんとふたりきり。
「みわさんは、今日は黄瀬君と?」
「うん、そうだったんだけど、電車止まってるし……」
いけない、見るからに落胆した顔しちゃった。
「じゃあ、黄瀬君が来るまでみわさんのクリスマスの時間、貰い受けてもいいですか?」
「え?」
もう試合中じゃないのに、ユニフォームは着ていないのに、真っ直ぐ射抜かれる、瞳。