第77章 共栄
あきの部屋の中、ノートパソコンのディスプレイサイズのテレビの中では、男性アナウンサーが不吉な事を話している。
「……え、なに?」
「なんかさー、どっかで施設が火事になって、停電になってるっぽいよ」
画面右上には"速報・東京23区内で大規模停電、原因は火災?"と書いてある。
続いて、画面に表示されたのは"運転見合わせ"の文字。
涼太が乗ってくる予定の電車、全て記載されている。
「うそ……」
きっと彼は今、電車の中だ。
ちらりとスマートフォンを確認したけれど、特に連絡は入っていない。
大混乱の中、きっと連絡出来ない状況なんだろう。
どうして、こんな日に限って。
泣きそう。
「……元気出しなよ。ほら、すぐ復旧するかもしんないしさ」
『現在、消火活動にあたっていますが、火は消し止められておりません。東京都内と埼玉県の一部で起きた停電の復旧作業は進められておりますが、目処は立っていないとの事です。この事故で、都内でエレベーター内に閉じ込め……』
目の前が真っ暗になる。
どうしていつも、こうなんだろう。
「あんたさー、マジで厄払い行った方がいいって」
「……私も本気でそう思ったから、行って来たよ先週……」
こんなにアレコレ起きるのは、あんた呪われてるんだと言われ、人生初の厄払い、行って来たのに。
やっぱり神も仏もないのかな……。
「……あー……あはは、じゃ、その時、違うのをまた連れて来ちゃったとか……」
「ううう……私、準備してくる……」
涼太、大丈夫かな。
電車内にカンヅメになってたりしないかな。
連絡取ろうか。
いや迷惑になるかも。
ううん……。
落ち込んでばっかりいたって、仕方ない。
夜までには復旧するかも。
5分でも10分でも会えるかも。
涼太の誕生日の時だって、彼は信じて待っててくれた。
うん、きっと大丈夫。
あと1時間、予定通り準備して待っていよう。