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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第77章 共栄


「さむ……」

朝だというのに、窓の外はブルーグレー。
暑いのは得意じゃないけれど、夏の日差しが懐かしく思える……冬空。

天気予報では、今日は雪になるかもしれない、と言っていた。

クリスマスイブに雪……聞いたことはある、ホワイトクリスマスになるのかな。

首都圏では交通が麻痺してしまう可能性の方が高いから、手放しでは喜べないけれど……ちょっとだけワクワクしている自分がいる。

だって、ふたりきりで過ごせるクリスマスは初めてだから。

ちらりとキッチンにある置き時計に目をやって、オーブンを開いた。

「やった、成功!」

練習に練習を重ねたクッキー。
本当は、頑張ってケーキを焼こうかと思っていたのだけれど、涼太が今日は街に出たいと言うので、持ち歩けるクッキーにしたんだ。

サンタさん、ツリー、長靴、雪だるま……冬にぴったり。
今回は焦げなかった!

せっせと袋詰めをして、ラッピング。
涼太が迎えに来てくれると言っていた時間まで、あと1時間半。
急いで準備しなくちゃ。

涼太用の袋とは別に、少し小さめの袋にクッキーをいくつか入れて、廊下にあるドアをノックした。

「はーい」

「あき、ちょっといいかな?」

「いいよん」

ドアを開けると、同じ間取りのはずなのに、私の部屋とは全く違う空間。

色彩はモノトーンで統一されていて、でもあちらこちらに置いてある物達は、可愛くてカラフルで……紛れもなく女の子の持ち物だ。

きっとこれが、男性が足を踏み入れてドキドキする【女の子の部屋】なんだろう。

物が全然なく、生活感がない私の部屋を思い出して、少し反省のため息。

……と、そうじゃなくて。

「メリークリスマス、あき!」

「あー何? いい匂い」

「クッキー焼いたの。良ければ」

「さんきゅー、嬉しいわ。あ、これあたしからね〜メリークリスマス」

思いがけず、手渡されたのは黒くて光沢のある紙袋。

「わ、嬉しい! ありがとう!」

中、見てみようかな。お部屋に戻ってからにしようかな。
そんな事を考えてたら、あきが怪訝そうな顔でテレビに目をやった。

「これさ……電車止まってんじゃない?」

「え?」


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