第76章 清新
……とは言ったものの。
7月はオレも日本男子学生選抜バスケットボール大会がある。
また、練習だ合宿だと休みがない日々になるだろう。
オレはバスケ・バイト・勉強。
みわは勉強・バイト。
特にみわは、毎日休む暇などないくらい、オレに負けずスケジュールが真っ黒だ。
それは彼女のクセなんだけど、やっぱり体調面を考えても、良くないと思う。
更に、お互いの家から家までの所要時間は、およそ2時間。
往復で実に4時間も使う計算だ。
でもやっぱりみわの誕生日、少しでもいいから、一緒に……
「ね、涼太、マッサージしていい?」
「ん? え、あ、うん、お願いするっス」
突然のみわの提案に、促されるままベッドへうつ伏せになる。
肩から、腰から、背中から、首から、足まで……ゆっくり、凝った筋肉を揉みほぐしてくれるのが気持ちいい。
「んー、きもちい」
「……疲れてるね、涼太」
「そうっスか?」
やりたい事をやってるからか、自覚はあんまりない。
高1のウィンターカップ以降、自主練のオーバーワークには何よりも気を遣っているし。
「私ね、誕生日に会えなくても大丈夫だよ」
「……なんで?」
「会えるなら会いたいけれど……きっとね、これからそういうの、難しくなるんじゃないかなって」
無言のまま、彼女の次の言葉を待つ。
マッサージの手は止まることはない。
「高校時代は学校も部活も一緒だったし、家もそれほど離れてなかった。今は、隣の県だけれど距離が出来て。これで、卒業してお仕事するようになったら、きっともっと時間を作るのが難しくなると思うんだよね」
「……そっスね」
「お互い、やらなきゃいけない事と出来る事を精一杯やって、それで、2人の時間が合う時に、会える時に会おうよ」
これからもっと会えなくなるなら、今の内に会っておいた方がいいじゃないスか、なんて言葉がちょっと浮かんだけれど、すぐ打ち消した。
その発言はオレの為を思ってのものだと、ハッキリ分かったから。