第76章 清新
「みわ、とりあえずちょっとでも寝よっか」
もう、既に朝だ。
窓の外では、鳥たちが楽しそうに笑ってる。
オレが言うのもなんだけど、みわは随分と身体が辛そうだし、少しでも寝た方が良さそう。
……いやホント、100%オレのせいなんスけどね。
自分の左腕にみわの頭を乗せようとしたら、細腕に抵抗の気配。
「あのっ、ダメなの腕枕は!」
「ん、なんで?」
とか言いながらも、オレの胸元に押し当てられた指が細くてキレーだな、なんて余計な事を考えていた。
みわにバレたら、絶対怒られる。
「あのね、ハネムーン症候群って症状があって、頻繁な腕枕は腕が痺れたりっていうのがね」
「なんかいいっスね、ハネムーン症候群」
ハネムーンか……
みわはどこに行きたいと言うだろうか?
単語ひとつでここまで幸せな気持ちになれるのだから、安いモンだ。
「違うの、そうじゃなくて、そんなロマンチックなのじゃなくてね、とう骨神経っていう神経が麻痺」
「みわ、こんな久しぶりにみわに触れられたんだ、今日は大目に見て?」
黙ってしまったみわの、うぐ、という声が聞こえて来そうで、思わず肩を揺らして笑った。
「ね、少しだけ寝よ」
「……少し、だけ、だよ」
ふわり、みわの髪から香るのは、オレが使ってるシャンプーの匂い。
どれだけ好きになれば済むんだろう。
「涼太、生まれてきてくれて、ありがとう」
みわの笑顔は、ひとを幸せにする。
オレも、幸せになれる。
「へへ、いつもソレ言ってくれんの、嬉しいっス」
ずっとずっと、離すつもりはないっスからね?
どんな運命であろうとも。