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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新


ひんやりとした耳元の感覚とは裏腹に、胸は高鳴って顔に熱が集まる。

「鏡、見てくるね」

ふわふわと雲の上を歩いているかのような足取りで、洗面所へ向かう。

好き。
スキ。
すき。

胸から溢れ出て、止まらない。
止められない。

電気をつけて洗面台を覗き込むと、右耳の耳朶に、グレーがかった涼太のトレードマークが光っている。

説明出来ない高揚感。
頭の中は涼太でいっぱい。
胸が、締め付けられるみたいだ。

どうしたらいいんだろう、この気持ち。

小ぶりのリングピアス。
ただ石がついているだけのピアスと、こんなにも印象って、変わるんだ……。

不思議に思いながら、何度も角度を変えて眺めていると、違和感に気が付く。

「え……?」

慣れない手つきで、だからなんだっけピアスを留めてる後ろの金具、あれを取る。
うっかり滑って飛んで行ってしまわないように、急いでいても慎重に。

外したピアスを手のひらに乗せると、そこには有り得ないものが付いていた。

「なんで……? 石……」

そう、涼太にプレゼントした時、彼のピアスにお店で入れて貰った誕生石。

もう片方……このピアスは私が使うだけだからと、何も入れなかったのに。

石を嵌めるための小さく穴が開いていた部分に、青い石が嵌っている。

その色は、深い海の青のような、星が瞬く夜空を連想させるような……ううん、もっと的確な表現があった。
大好きな色……見慣れた海常ブルーだ。

「ラピスラズリ、っスよ」

突然の声に、驚いてピアスを落としそうになってしまって、慌てて押さえて振り向いた。

「涼太、これ、どうして……!」

「後から石入れられるサービスもやってたんス。みわにもと思ってさ。
3月の誕生石と迷ったんスけど、石の意味とか色とか考えて、こっちにしたのが正解だったかな」

「ありがとう……」

濃い青色に、表面に散りばめられた金色の斑点状の模様。
石にとっては不純物かもしれないけれど、ブルーを背負って戦った、愛しいひとにしか見えない。

ずっと一緒

そう、言ってくれてるんだ。

そして、すぐ横に文字が刻印されていることに、気が付いた。


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