第22章 夏合宿 ー4日目・ふたりの夜ー
「みわっち、言ってくんないと進まねっスよ。オレ帰ろっか?」
「まっ、まって……!」
その縋るような目。ああ、いじめたくなる。
煽るだけ煽ってお預けとかやめてね?
「きっ、黄瀬くん……」
「ハイハイ?」
「……抱きしめて……ほし、い」
……ようやく入門編クリアっスかね。
頑張って恥ずかしそうにお願いされるって、思ってたよりずっと興奮する。
振り絞って振り絞って、ようやく出た一言だ。
「こうっスか?」
いつもオレから抱きしめる時よりもわざと長い時間をかけて、腕を回す。
抱きしめた途端、みわっちの緊張で固まっていた身体が、わずかにほぐれたようだった。
「黄瀬くんの匂い……安心する……」
可愛すぎない?
……なんなのみわっち。
鼻腔をくすぐる彼女の香りが、安心感を運んできてくれる。
身体の無駄な力を抜いてくれるみたいだ。
全身くまなく舐めてあげたいけど、我慢我慢。
ただ抱きしめることに徹する。
「……次は?」
オレで安心してくれるのは嬉しいっスけど、今みわっちをいじめてるのも、オレっスからね?
分かってるのかな……