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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新


「さすがみわは、オレよりオレのサイズ、分かってるっスわ」

バッシュに足を通した涼太が、トントンと踵を鳴らしてステップを踏む。

その動きひとつとっても、彼はやはりモデルだ。
凡人のそれとは違う、圧倒的なオーラ。

"オレよりオレのこと、分かってる"

数ヶ月前なら、自信を持って頷いていた。
でも、今はどうだろう。

毎日、涼太がどうやってトレーニングをしているか、今は知らない。

少し厚みを増した筋肉。
こうして離れている間にも、どんどん変わって行っちゃうのかな。

「みわがすぐそばに居てくれるみたいっスね」

でも、散々悩んだプレゼント、気に入ってくれたみたいで良かった。

「こんな高いモン、バイト代、使ってくれたんスか?」

「うん、でもそんなに大したものじゃないの……」

「ごめんね。無理させて。でも、メチャクチャ嬉しいっス」

豪華なプレゼントは思い付かなくて。
つい、私の代わりに彼と一緒に居られるものを、なんて考えちゃって。

これでいいかなって、何度も悩んだ。
でも。

「良かった……」

涼太のその嬉しそうな笑顔で、全部吹き飛んだ。

満足げにしげしげと脱いだバッシュを見つめていた涼太は、何かに気が付いたかのように行動速度を上げて、私の隣に座る。

「カカトに名前の刺繍が入ってる」

Ryota.K……金色の糸で紡がれたそのイニシャル。
名入れサービスを利用しただけで、私は何もしていないんだけど。

「みわの名前も一緒に並べたいっスわ〜」

楽しそうな横顔が眩しい。
また見惚れていると、凄い勢いで涼太が振り向いた。

「わ、っ」

「ピアスどう? 膿まなかった?」

右耳の耳朶に触れられて、思わず身じろぐ。
触り方があまりにも優しすぎて、愛撫みたいだ。

「……ん、膿まなかったよ。毎日ちゃんと消毒もしたし、大丈夫だと思うんだけど……」

消毒も、今では手慣れたもの。
自分の耳に穴が開いているという、時々感じていた違和感も、もう感じなくなっていた。

「じゃ、今度はオレの番。ファーストピアス、外そっか」

どきり、心臓が騒ぎ出す。


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