第76章 清新
暫く、子どもにそうするようにヨシヨシと頭をぽんぽんされて。
「頑張って声……あげたんスね」
「うん……っん」
バスタオルの上からお尻を撫でられて、変な声が出そうになる。
「強いっスよ……みわは」
触れた手が、熱い。
情けなくて、汚されたような気がして悲しい気持ちも、涼太が全部受け止めてくれる。
どうしよう。
泣きたくなる。
縋ってしまいそうになる気持ちをぐっと堪えた。
「……で、いつまで触ってるの……」
「いや、このカタチのいいお尻が涼太君に触って欲しいと」
あながち間違いでもなくて、でもどうしたらいいのか分からなくて、いつものようにぺちりと手の甲を叩いた。
「いてっ!」と小さく悲鳴を上げた涼太は、どこか嬉しそうににこにこと微笑んだまま、脱衣所を去って行った。
私がお風呂を上がってから、涼太も続けてお風呂に入って。
久々の、お風呂上がりにふたりでのんびりとお喋りをする時間。
下着を含めた衣類を全て洗濯して貰ってしまっているから、着るものがない。
お尻が隠れるくらいの少し長めのTシャツを借りたけれど、何も履いていない下半身がスースーして落ち着かない……。
「学校とかバイトとか、どうっスか?」
「うん、お姉さんに紹介して貰った整骨院ね、いい人ばっかりで本当に勉強になってるの。学校も、別に新しい友達とかは作ってないけど、私らしくやってる。涼太は?」
「ん、オレは相変わらず。朝練行って講義受けて午後練して。たまにモデルのバイトしてって生活にも慣れてきたとこっスかね」
そう、慣れてきたところ。
……お互いがすぐ近くにいない生活に。
そう思っていたのに、会うとこんなにも胸が焦れる。
彼の誕生日が終わるまで、あとわずか。
「涼太……遅くなっちゃったけど、お誕生日おめでとう」
「うわ、バッシュっスか?! マジで!? おまけにオレが欲しかったモデルじゃん!」
私たちの母校、海常を思い出させるブルーと、涼太の髪色のような鮮やかなイエローのライン。
彼が輝く舞台へ一緒に連れて行って欲しい、そんな気持ちを含んだプレゼント。