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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新


みわが着信中らしいスマートフォンを持って考え込んでいるもんだから、ちょいと声をかけたら予想以上に驚かれてしまった。

その拍子に、受信ボタンを押してしまったようだ。

「あっ、は、はい神崎ですっ、お疲れ様です!」

ちまりと小さくなって正座で話している姿が可愛らしい。

見た事のないお仕事モード。

後ろから抱きしめそうになったのをグッと堪えて、キッチンへ向かう。

ケーキ用の小皿とフォークを用意し、紅茶を淹れる事にした。

「え……っ?」

おや?
なんか、雲行きが怪しい?

「えっ、そんな、いいんですか、いえ、えっと」

オレの方をチラチラと見ながら、困った様子。
ひどい慌てぶりだ。

「……、はい……はい、じゃあ、お言葉に甘えて、はい、ありがとうございます、よろしくお願いします……」

みわは通話を終えると、画面に視線を落としたまま、ふうと小さいながらも深い息をついた。

「どしたんスか、みわ」

「あのね、今日、仕事中に行方不明になっちゃってた人からの電話だったの」

事情は、さっき電話を貰った時に聞いた。
事件に巻き込まれたとかじゃなくて、良かった。

困っているヒトが居ると放っておけないお人好しなところは、相変わらずだ。

「うん、なんか急ぎの用事だった?」

みわの視線が、泳いだ。
都合が悪いことでもあるんだろうか。

「あ、あの、今日は迷惑かけてすみませんでした、って」

「うん、それで?」

「あっ、あの、迷惑かけちゃったから、明日のシフト、代わるって……今日が大切な日だってこと、職場の他のひとから聞いたみたい」

「……マジで?」

ちらり、時計を見る。
このままなら、あと数十分後にはまた離れ離れだ。

「涼太……泊まっていっても、いいかな?」

「モチロン、モチロンっスよ!」

まさかの展開に、こころが弾む。
一瞬で、霧がパッと晴れたような。

みわと一緒に過ごせる時間が、イチバンの誕生日プレゼント。

それは同時に、欲望との戦いであるわけなんだけども……薄いグレーのサルエルパンツにしといて良かった。
勃っても外からは分かりづらい。

そんなしょーもない事を考えてしまった。


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