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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新


涼太のベッドに運ばれた私は、脳みそが溶け出てしまっているんじゃないかと思うほど、ぼんやりとしていた。

でも、続きがされる事はなくて。
きっと、歯止めが効かなくなる前にと、彼なりの気遣いなんだと思う。

私がくたりとしているその間に、手際良く濡れた靴下を脱がされ、丁寧にタオルで拭かれる。

「乾かしちゃうっスね、帰りまでに靴は完全には乾かないと思うけど」

そう言われて、様々な事を思い出す。
骨抜きにされている場合じゃなかった。

すぐに帰らなきゃいけないんだ。
ボーッとしている時間なんて1秒もない。

そこでまた思い出す。
汚されたスカートの事を。

赤司さんにはそんな事を話す事は出来なくて、車に乗せて貰った時も、汚された部分がシートに触れないように座ってた。

慌てて、同じようにスカートを纏める。
涼太の寝床を汚すなんて、それこそとんでもない事だ。

手に触れたスカートは、雨によって思いの外濡れてしまっていて、慌ててベッドから降りた。
今まで自分が横たわっていた部分をぽすぽすと叩き、湿気が移っていない事を確認する。

机の上に置かれたケーキの箱と、テーブルの下に置かれた私のリュック。

リュックに手を伸ばしたところで、涼太が戻って来た。

私、大事な事を言ってなかった!!
いや、0時になった時に電話で言ったんだけど!

「涼太、お誕生日おめでとう!」

勢いあまって大音量になったお祝いの言葉に、涼太は少し驚いたようにして、すぐに破顔した。

「ありがと、みわ。一緒に過ごせて、嬉しいっス」

その素直な言葉に、鼻がツンと痛くなる。
こんな、少しの時間なのに。
もっと、ちゃんとお祝いしたかったのに。

ちらり、時計を見ると残り30分もない。
急いで鞄からプレゼントを出そうと手を入れると、スマートフォンが振動している事に気が付いた。

発信者は、今日まさに行方不明になっていた、彼女からだった。
何の用だろう? 急ぎかな、後でじゃだめかな……

「電話、出ないんスか?」

「わっ!」

ヒョイと覗き込まれて、驚いてつい応答をタップしてしまった。



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