• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新


「ん、っ……」

すり、と唇が触れるか触れないかの優しさで触れ、舌がペロリと下唇を舐める。

もどかしくて、もっと欲しくて。

「涼太……!」

その名前を声に出したら、同時に涙が溢れてきた。

それに合わせて一気に深くなるキス。
彼の肌が触れて、私は服を着ているのに、まるで裸で抱き合っているかのような錯覚に陥る。

「ッ、りょう、た」

涙のせいで、鼻まで詰まって、息苦しくなって……そのせいなのか、頭がくらくらする。

熱い。
頭が、身体がとろけていく。

ぞくぞくと電流のように走り抜けていく快感が、身体の自由を根こそぎ奪う。

「みわ……」

耳元でささめくその言葉は、涼太も私に会いたかったと、そう思ってくれていたのが如実に表れている声音で奏でられた。

まだ玄関を上がって数歩の距離だというのに、ふたりの気持ちは音を立てて燃え上がる。

以前、玄関で抱かれた事がある……そんな事をふと思い出して。

あの時よりも少しオトナになって、お金も少し稼げるようになって、成長していなきゃいけないはずなのに。

私はまた、後退している。
彼を、自らに受け入れられずにいる。

記憶の端にも引っかかっていないのに、自分の大切にしていたものは、いつも全てなくなってしまうんだという、脅迫じみた恐怖に支配されていた。

涼太に全部忘れさせて欲しい。
そんな事、彼にさせられない。

迷いの思考は快楽の渦に呆気なく巻き込まれて、跡形も無くなる。

ただ目の前にある、愛しいひととの甘い時間に、溺れていく。

「……っ、はぁッ、はぁ」

やっと解放された頃には、腰にも足にも力が入らなくなっていた。

がくがくと震える身体を、涼太は優しく微笑んで担ぎ上げていった。



/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp