• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新


「赤司さん、それってどういう……」

「あ、ケーキの店はそこかな? パティスリーの看板が見えるよ」

赤司さんが指差した先には、インターネットに載っていた写真と同じ建物。

「ここです! ありがとうございます!」

急いで車を降り、ショーウィンドウから中を覗くと、片付けをしていたらしい店員さんが気付いて、入り口を開けてくれた。

頼んであったケーキを受け取って、再び車の中へ。

……何の話をしてたんだっけ?
安心したら、気が抜けて……

「じゃあ、黄瀬の家に向かうよ」

「すみません、よろしくお願いします」

……あ、そうだと思い出したけれど、もう話題は違うものに変わっていて。

また、機会があれば聞いてみよう……。

「……あの時は、力になれなくて本当に申し訳なく思う」

「いえ、本当にそんな事ないんです! 赤司さんがいなかったら、多分……」

「何か、俺に協力出来る事はあるかな」

協力出来る事……?

「いえ、もう十分にして頂きましたので、本当に」

赤司さんが気に病む事なんて、何もない。
もう、これ以上彼に何かを求めるなんて、贅沢すぎてバチが当たるというか。

「いや、本当に何か、俺に手伝える事はないかな」

ここまで食い下がってくるのも珍しくて……でも、本当に今、思い付かないんだもの。

「……分かりました。じゃあ、困った時には赤司さんに頼らせて貰ってもいいですか?」

「なんなりと」

そう言うと彼は少し安心したような、ガッカリしたような複雑な表情を浮かべた。

皆、優しいんだ。
黒子くんもそう。
その優しさに、今まで甘えすぎた。

これからは皆に、この気持ちを返そう。

そうこころに誓ったまま、車は国道を進んでいく。

21時過ぎには、涼太の家の最寄駅に到着した。
1時間は一緒に居られる!!




「あの、ここで大丈夫です」

「黄瀬の家まで送って行くよ」

「いえ、もう、すぐですので!」

涼太の住んでいるアパートに繋がる大きな道路が、ここ数日の間の大雨のせいで、通行止めになってしまっていた。

後は、車は通れないけれどひとは歩くことが出来る畑道がある。

赤司さんにはその手前まで送って貰った。

車が小さくなったのを見送って、歩き出した直後。

天から降ってきた大粒の雫が、髪を濡らした。



/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp