第76章 清新
因果応報
この言葉は、正しいと思う。
自分が起こした悪い事は、全部自分に跳ね返ってくるんだ。
私は、報いを受けているの?
どうして? どうして?
グルグルと混乱した頭で考えても、答えなんか出るわけがない。
今日は、グレーの薄手の7部袖カーディガンに、水色のストライプ柄のスカートを履いてきた。
スカート丈は長め。膝は出ない程度。
頑張ってミニスカートを履かなくて良かった。
腰の下あたりから撫で回されているのが、本当に気持ちが悪くて、怖い。
声を、声を出す!
この静かな車内なら、気付いて貰えるはず!
そう思ったのに、車内にはポツポツとひとの声が溢れ出した。
皆、狭い車内であれやこれやと電話をしている。
のんびりメッセージを打てるような空間が確保されていないからなのか。
小さな声じゃだめ、大きな声を出さないと!
焦る心臓がバクバクと脈打っていく。
それからどの位耐えていただろう……耳元で、ハァハァと荒く息をする気配が近づいてきた。
嫌だ、これじゃ高校を入学した時と同じ、なんにも成長出来てないよ。
お尻に、硬いものが当たっている。
それの正体を、私は知ってる。
気持ち悪い。
やめて。
なんでそんな事するの……!
男は、変わらず身体を押し付けてくる。
『お客様にお知らせします。この列車は、次の◯◯駅まで向かいます。各線、振替輸送を実施中です。ご利用の方は……』
アナウンスと共に、電車が動き出した。
それと当時に、車内の音声が、消えた。
今だ。
「ち、痴漢、です! 触られて、ます!」
誰も、助けてくれないかもしれない。
でも、もう黙ったまま泣き寝入り、したくない!