第4章 黒子くん
彼が手にした携帯でメールらしきものを送ると、すぐに震えだした。
「もう返信がきました。寝てないんですかね……うちに寄って欲しい、との事です。
えっと、神崎さん、ですよね?」
「あ、はい、そうです。私、神崎です」
「えっと……黄瀬君からのメールを抜粋します。"良ければ黒子っちと来て。黒子っちは信頼できるから大丈夫っスよ。" だそうですが」
「え、えっと……?」
見せてくれた画面には、確かにそう書いてある。
黄瀬くんが、私をおうちに?
ど、どういう展開!?
そもそも男の子の家になんて行った事もない。
どうしたらいいの?
そんな私の動揺を察してか、くろこくんは薄く微笑んだ。
「あ、でも黄瀬君は今は実家暮らしですし、お母さんもお姉さんもいるはずですから比較的安心だと思いますよ」
まるでこころを読まれたかのように、さっと彼にフォローされてしまった。
本当に不思議な人。
「じゃ、じゃあ少しだけ、お見舞いに……えっと、なんてお呼びすれば」
「黒子、でいいですよ。ブラックの黒に子どもの子。カタカナでテツヤ、です」
「黒子、くん……」
この不思議な空気に惑わされてしまったんだろうか。
そうして、彼……黒子くんと一緒に黄瀬くんのお家に向かうことになった。
つい先日まで、男性と言葉を交わすことすら出来なかったのに、最近のこの躍進は一体どういうことだろう。
私……いつかは、男性恐怖症を克服すること、できるのかな……。
無理だって、分かっているけれど……淡い期待を抱かずにはいられなくて。
物静かな彼と、ゆっくり歩き始めた。