第4章 黒子くん
あの後、黄瀬くんは早退したみたいだ。
彼は一見、天真爛漫キャラに見えて、無理して頑張っちゃうタイプみたいだし、ゆっくり休めるといいな。
そうして今日も、私は放課後、バスケ部専用の体育館に来ている。
黄瀬くんがいないからか、いつもの人だかりはないようだった。
ドア付近で練習を見ていると、主将の笠松先輩が話しかけてきてくれて。
「えっと……いつも来てくれてるよな。今日、黄瀬アイツ、早退して部活こねーから」
……えっ、と?
「あ、ハイ、同じクラスなので存じ上げておりますが……あ…… 、練習、見学していると邪魔でしょうか?」
しまった、やっぱり見学者がいると、部員の皆さんの気が散るのかもしれない。
そう思って聞き返したんだけれど……
「き、黄瀬いなくてもいいんなら……どうぞ、ゆっくり見ていって」
耳まで真っ赤にした笠松先輩は、くるっと踵を返した。
いい、のかな……?
体育館内は今日も活気付いている。
しばらく時間が経った後、体育館の入り口に水色の髪をした男の子がひょっこりとやってきた。
制服が違うので、他校生だろうか。
体育館の中を眺め、キョロキョロしている。
「あの……誰かお探しですか?」
私が見かねて声をかけると、男の子は、少し驚いたような表情で
「驚きました……凄いですね、すんなりボクに気づくなんて」
えっと……?
彼が何を言っているのか分からない。
どういう意味?
「黄瀬君は、いますか? ボクは誠凛高校の黒子といいます」
ん……
せいりん、の、くろこ……?
「もしかして"くろこっち"さんですか?」
「はい。ふふ、その呼び方、黄瀬君みたいですね。黄瀬君の彼女さんですか?」
まさかの質問に、驚いて数歩後ずさった。
「いえ、違います! ただのクラスメイトです。黄瀬くん、今日早退してしまいまして……」
両手をぶんぶん振りながら必死に否定。
周りから見たらただの不審な女だ。
「そうですか。アポなしで来たボクが悪かったですね。ありがとうございます。メールして帰ります」
……なんだか不思議な雰囲気の人だな。
でも空気が穏やかで、なんだか癒される。