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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新



深夜の部屋に響くのは、しっとりと耳に馴染む、ケーキのスポンジみたいに柔らかくて優しくて、甘い声。

『今日、決勝の観戦に行ってたんスよ。
帰りにみわんトコ行こうかなって思い立って、ビックリさせようと思って。
でも留守じゃ意味ないよなって、あきサンにコッソリ連絡取ったらさ、寝込んでるって言うから』

そうだった。
涼太とあきは、気軽にやり取りが出来る仲だった。

もしかして、普段のだらしない姿も筒抜け?
あくびしながらポリポリ頭掻いたり、お風呂場に下着持って行くの忘れて、慌ててタオルを巻いて部屋に駆け込んだり、ご飯食べながらウトウトしたり。

……うう、確認する術がないや……。

『どうっスか、体調?』

「もう大丈夫。熱も下がったし。2日間、丸々寝込んじゃったの……」

『たまにはゆっくりしろって、カミサマが言ってんのかもしんないっスね』

ううん、元はと言えば、1日ゆっくりしたあの日がいけなかったんだと思う。

もう少し、計画的に休みの日の予定を考えないとだめなのかもしれない。

これがなければ、準決勝だって観に行けたし、今日だって……
ああ、まただ。
だめだと思ってるのに、後悔ばかりがぐるぐる渦巻いて。

「ごめんね、ごめんなさい。折角、折角来てくれたのに」

『いいんスよ。オレが勝手に会いたくなっただけだから』

わたし……私も、会いたかった。
会いたかったよ……。

口に出すと、どんどんどんどん溢れてきてしまいそうで、言えない。
会いたい。
会いたいよ。

「……っ、もう、来月まで会えないかな」

平然を装って明るい声を出したつもりが、上ずってしまう。

『……そっスね……オレは新人戦があるから、難しいかもしんねぇっスわ』

「……そう、だよね。まだ学校も始まったばかりだし、やらなきゃいけない事いっぱいあるよね」

『ごめんね、みわ』

「謝らないで! それは私も同じだから。
お互い、頑張ろうね!」

精一杯の明るさで。
頬を濡らすものには目を背けて。


その日は、後悔で押し潰されそうになりながら、通話を切った。


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