• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新


ようやく眠りにつけたのは、窓の外の色が変わり始めた頃……4時を過ぎていた。

それなのに結局、寝付いてから1時間もしないで目が覚めてしまって……。

起き上がった拍子に、激しく咳き込んだ。
頭痛も咽喉痛も、関節の痛みも無くなっていない。

よく眠れていないから、汗もかいてない。
身体が熱くて、怠い。
熱……絶対、下がってない。

今日、試合なのに。
遠目でも、涼太に会える日なのに。

病院は、休診日だ。
昨夜のうちに、救急外来に行っておくべきだった。
薬飲んで寝てれば治るなんて、思い上がってた。

どうしよう、試合は10時からだから、遅くとも8時半には家を出なきゃ。

今……5時過ぎ。
今から救急外来に行って、薬貰ってくれば間に合うかな、そうしようか。

布団から出て、また咳き込む。
勢いで吐いてしまいそうだ。

「みわ? 起きてんの?」

ドアの向こうからあきの声。
ひとりぼっちじゃなくて良かったと、情けない弱音が胸に湧く。

マスクを装着して、鞄を持って部屋を出た。

「ごめんね、咳うるさかった?」

「いや、いいんだけど……どこ行くの?」

「救急行って来ようかと思って。今日10時から試合だし……」

玄関に向かう私の腕を、あきの柔らかい手が掴んだ。

「待ちなよ」

「……え……」

剣呑な雰囲気に、思わず息を呑む。

「病院行くのはいいよ。あたしも付き添うよ。でも試合に行くのは許さない」

普段のあきからは想像出来ないような、非難めいた強い口調。

「どっ、どうして……」

「なんで熱出たか、分かってんの?」

言われて、気付く。
そうか、この高熱の原因が感染症の類だったら、ひとが集まる試合会場なんて行ったら大変な事になる。

「ごめんなさい。私、自分の事しか考えてなかった。感染症だったら、ちゃんと帰って来る」

あきは、深い深いため息をついた。

「違うっつの。今までの疲れがドッと出たんでしょうが。それなのに更に無理するのは許さないって言ってんのよ」




/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp