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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新




『モシモシ、みわ? 今日の試合、勝ったっスよ!』

明るい声で報告をしてくれるその声に、癒される。

うん、癒される。
ほわって、身体から疲れが溶け出ていくみたいな。

楽しそうに話してくれるその声を聞きながら、パンフレットに載った彼の写真をひと撫で。

会場の大歓声を思い出す。
沢山のひとの声を浴びて、きらきら、きらきらと輝いていた。

『明日は1日調整で、明後日また試合なんスよ』

うん、知ってるよ。
明後日が準決勝、その次の日が決勝戦だよね。

涼太の性格なら、"観に来て欲しいっス!"なんて言うかと思ったけれど、彼の口からその言葉は出て来なかった。

新生活に追われている私への、彼らしい気遣いだ。

実は、今日の試合も観に行ったんだよ!
そう言えば簡単なのに、何故か言うことが出来なくて。

『やっぱり、今日の試合でも連携がうまくないトコが結構あってさ……』

幸せな、時間。
大好きだ……。
布団に身を投げ出して、そのあったかい声に身体ごと意識を委ねる。

『みわは今日、何してたんスか?』

「へっ?」

いけない、ぽーっとしてた。

『今日もお疲れみたいっスね。たまにはゆっくりできないの?』

今日は試合を観に行って、いやこれは言えない、駅で倒れて、いやこれも絶対言えない、なに、なんか言えることないかな!?
そうだ!

「あっ、レバニラ炒めでね、えっと、あの、明日は、頑張るから!」

少しの沈黙、追ってくすくすと笑い声。

『……ゆっくりは、出来そうにないんスね? 夕飯はレバニラ炒めだったんスか?』

「えっ、なんで知ってるの!?」

『みわが自分で言ったんスよ。遅くにゴメンね。ゆっくり休んで』

おやすみ、と囁かれた声で耳が熱くなる。

「りょ、涼太!」

『そうだ、みわ……決勝戦は、観に来てくんないっスか。明後日の準決勝、頑張ってくるからさ』

……まさかの。

「うん、決勝行く、行くよ!」

彼の代わりに、ギュッとパンフレットを抱き締めた。


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