第76章 清新
「ごめんなさい、暫くは予定がつきそうにないんだけれど」
そもそも、そんなに予定がつくなら、涼太にも会いに行ってるし……。
「……それは、体の良いお断り文句、でしょうか?」
黒子くんが、寂しそうな顔でこちらを見ている。
「あっ、そうじゃないの、本当に、自分でもどうしたらいいか……」
そうじゃない。
彼はとても大切な友人。
近況とか、話したい事も沢山ある。
「見てもいいですか? 予定」
「あ、うん……」
予定が入っている事が嘘じゃないと分かれば、納得して貰えるだろう。
不用意に傷付けてしまう事だけはしたくない。
手帳自体はシンプルだけど、予定を書き込むのはカラーペンを使って色分けしているから、それなりに見易くなっている筈。
あきに教えて貰ったのだけれど。
手帳を覗き込んだ黒子くんは、眉間に深い皺を寄せた。
「……みわさん、ちょっとこれは……予定、詰め過ぎじゃないですか?」
「そうかな……でもまだまだ」
「みわさん」
詰め過ぎと言っても、講義とバイトしかないシンプルな予定。
本当は、もっともっと頑張らなきゃいけないのに、呑気にお休みなんて……
「せめて1ヶ月のうちに、お休みを少し入れないと、倒れてしまいますよ。……現に今日、倒れたんですから」
「う、はい……で、でも……」
それを言われてしまうと、ぐうの音も出ない。
勝手に倒れて、黒子くんに迷惑をかけたのは私だ。
……でも……
「……スケジュールが埋まっていると、安心しますか? 何かしていないと、黄瀬君と不釣り合いな気がしてしまうんですか?」
「……あ……」
「当たらずとも遠からず、ですか」
……当たらずとも遠からず、なんてものじゃない……ズバリ、的中だ。
あの歓声……
あの、輝き続けるひとの、隣にいるためには。
すぐ、不安になる。
すごく、不安になる。
このまんまでいいのかって、なんの力もない私自身に。