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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新


試合終了のブザーが鳴った。
涼太の学校の大勝だ。

歓声と拍手が鳴り止まぬ中、選手たちがセンターラインに整列している間に、会場を出た。

これ以上見ていたら、会いたくて会いたくて気が狂ってしまいそう。

小走りで移動を始めると、交通機関の混雑を懸念して、同じように早いタイミングで体育館を出ようとする人々が大勢、出口へと向かっている。

赤い目と鼻を見られないように、俯きながら駅へ向かった。

ふと、目に付いたのは物販ブース。
大会詳細や、選手たちのデータが載っているというパンフレットが売っているのが見える。

殆ど列が出来ていなかったため、すかさず並んで1部購入。

表紙には、大きな大会ロゴと日程・会場の他に、今大会で注目を集めている数人の選手が写っている。

その中には、笠松先輩と、涼太の姿があった。

ユニフォームは、黒地に黄色の文字。
先ほども見たその姿……海常ユニフォームとは全く異なる色合いに、正直違和感を感じてしまった。

でもそれは、涼太が新しい世界へ足を踏み入れた証。

「かっこいいな……」

蝶が舞い踊るかのようなステップで相手のディフェンスを翻弄し、鳥が飛翔するかの如く、空を飛ぶ。

感嘆のため息と共に、会場中が彼に魅了されていく。

シュートを決めて他のメンバーと手を叩く姿。
逆にシュートを決められて悔しそうにする姿。
オフェンスもディフェンスも、集中を切らすことなくプレーして。
試合終了のブザーとともに零れた微笑みは、少年のように無邪気なものだった。

なんて素敵なひとなんだろう。
なんて……遠いひとなんだろう。

次の試合は明後日だ。
明日はまたバイトを頑張る。
空き時間で勉強したい。読んでおいた方がいい文献も山ほどある。

私は私のステージで、やるべき事を。
急いては事をし損ずる、そんな事を考えながら駅の電光掲示板を見る。
もうすぐに電車が来そう。

ここから自宅まで1時間以上電車に乗らなければならない現実を憂いて、またひとつため息をついた。



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