第76章 清新
『次……いつ、会えるっスかね』
机に置いてある、卓上カレンダーに目をやる。
おばあちゃんが商店街のお花屋さんで貰ってきてくれたらしいそれは、左右が綺麗なお花で飾られていて、色がない私の部屋を明るくしてくれている。
「……5月は大会が多いよね。次は……涼太のお誕生日、かなあ?」
ぺらり、1枚めくると、バスケの大会の日程がマーカーしてある。
4月下旬からは関東大学バスケットボール選手権が始まるし、5月には日韓学生バスケットボール競技大会がある。
更に、5月から6月にかけては、関東大学バスケットボール新人戦も控えてるんだ。
それこそ、涼太は練習や合宿漬けの毎日になるだろう。
『そっか……』
ちょっと行って会える距離じゃないのは、お互いちゃんと分かってる。
「……それまで、頑張ろうね。涼太、応援してるね」
『ん……ありがと。勝つっスよ、オレ』
そこからまた少し話をして、通話を終えた。
途端に、耳を突くような静寂に襲われる。
……会いたい。
スマートフォンを机に置いて、代わりに卓上カレンダーを手に取る。
いち、に、さん……止めておけばいいのに、涼太の誕生日までの日数を数えてしまう。
50を超えた時点で、手を止めた。
思わず、耳を塞ぐ。
さっきまでの優しい声がまだ耳の中に残っているんじゃないかと期待して、でもやっぱりそこにあるのは沈黙だけで、そんな都合のいい事が起こるわけないよねと諦めて、ため息をついた。
簡素な机と椅子から離れて、クロゼットから下着とパジャマを手に取った。
お風呂に入ろう。
ゆっくり疲れを流して、明日に備える。
今出来ることを、やるだけ。
涼太に貰ったボディソープと彼とお揃いのボディクリームで肌を整えて、肌触りのよいパジャマに着替えて、水分補給。
軽くストレッチをした後に勉強をしてから、布団に入った。
なんだか色々なことが頭の中を巡って、暫く寝付けなかった。