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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新


『みわこそ、なんか用があったんスか?』

「え……っ」

何か用事……ない。
おやすみなさいって、声が聞きたくて、それだけで……どうしよう。

迷惑だった、よね。
分かってた、分かってたけど。
喉が詰まったみたいに、声が出ない。

『特になし?』

「えっ、あっ、ごめんなさい、あの」

『じゃあ、オレ喋ってもいー?』

「……え?」

『ん? 用ないって事は、オレの声が聞きたくてかけてきてくれたんじゃないんスか?』

「う、あうあう」

そうなんだけど、確かにそうなんだけど、そうあっけらかんと明るく言われてしまうと、恥ずかしくて顔から火を噴きそう。

『オレもみわの声聞きたくてさ』

そう言いながら、まるで歌のように音を重ねていく様が耳に心地良くて。

涼太は、様々な事を話してくれた。

講義の雰囲気、バスケ部の普段の練習、ひとり暮らしでの家事、アパートの隣人、チームメイト……チームは人間関係が良く、うまくまとまっているみたい。

『笠松センパイがさ、よくウチに来るんスよね〜。最近は深夜までアレコレ喋ってたりするんスわ』

知っている名前に、ホッとする。
弾む声が、彼の新生活が充実している事を表してるから、私まで嬉しくなる。

更に涼太は、空き時間を見つけてモデルのバイトをまた再開したらしい。

とてもじゃないけど、往復4時間もの移動時間をかける余裕はなさそう。
……それは私も同じなわけで。

『みわは、どう?』

「うん、今は講義と、整骨院でのバイトだけだから。もう少し慣れてきたら、もっと楽になると思う」

『の割には、疲れた声っスね』

突然の指摘に、言葉を失う。
私……そんなくたびれた声で話していた?
感じ、悪かった?

「ごめんね、そんなつもりじゃなかったんだけど」

『頑張りすぎんのはみわの悪いクセ。栄養と休養とって、身体だけは壊さないようにして欲しいんスけど』

……心配そうな、声。

「うん、大丈夫だよ、ありがとう」

余計な心配をかけてはいけない。
私はまず、自分の管理を徹底しなきゃ。




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