• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新


「ご馳走さまでした」

「後は片付けとくから、黄瀬に電話でもしてきな」

「えっ」

下げようと思ったお皿たちをサッと奪われて、キッチンへ足早に去るあきを慌てて追いかけても、シッシッとまるで犬を追い払うような仕草。

「えっ、じゃないでしょ。黄瀬にちゃんと連絡してんの?」

「してるよ! さっきも、バイト終わったよって、メッセージ送ったし……」

「電話は?」

キッ、と睨み付けてくる眼光は鋭い。
シャープな目元が、更に鋭角になっているような気すらする。

「電話は……してないけど。涼太も、忙しいだろうから邪魔できないし」

「ダメ。電話してこい」

「ええっ……」

有無を言わさぬ態度にタジタジだ。
……電話出来るものなら、したい。
でも、彼の負担になるような事だけは、したくない。

したい、したくない。
もう、疲弊した脳みそはパニック寸前。

「いいから行けっつの!」

キッチンから追い出され、渋々と部屋に戻ると、スマートフォンを取った。

アドレス帳を開いて、愛しいひとの名前をひと撫で。

あきに言われたからじゃなくて……

……声、聞きたいな。

散々押さえつけていた欲が、顔を出し始めた。

少し、だけ。
30秒だけ。
おやすみなさいって言うだけなら、いいかな?

涼太、何をしているんだろう。
練習……は、もう終わってるよね。
勉強……は、してないかな?
ご飯……も、もう終わってるはず。
お風呂……かもしれないし、もう寝ちゃってるかも。

ゴチャゴチャと考えながら、彼の番号をタップ。
3コールで出なかったら、やめよう。

耳に当てたスマートフォンのスピーカーから、プルルルルと呼び出し音が鳴り始めるのを待つ。

1回……

『もしもしみわ?』

えっ?

「あ、も、もしもし?」

今、1回目の途中で繋がった!
もしかして、画面を触っていたのだろうか。

「ごめんね、何かしてる最中だった?」

『んや、みわに電話しよっかなって思ったトコだったんスよ。だからビックリ』

涼太の……声だ。

3月の引越しから数週間、メッセージだけの日々。

声……聞きたかった。
波音の様に、こころに染み込んでいく声。



/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp