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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第76章 清新





4月、また季節が巡ってきた。

桜の季節も終わりへと近付いて、出番を待つ蕾たちが芽を出し始める。
何もかもが新しくて、眩しくて。

そんな季節のはずだけれど……

私も涼太も、多忙を極めていた。


始まった大学の講義に加え、合間に入れたバイト。

結局、私は涼太のお姉さんのお友達に紹介して頂いた場所……駅前の整骨院で働く事になった。

仕事自体は受付なので、技術は必要ない。
患者さんをご案内したり、お会計を担当したり、片付けをしたり……簡単に言えば、雑用係だ。

以前私も整骨院でお世話になっていた経験もあるので、ある程度は勝手が分かり、比較的スムーズに業務を覚えられている……と思う。

前任者はどうやら突然辞めてしまったらしく、今いるスタッフで穴を埋めていたのが大変だったそうで。

女性も多いところで、不安も……少ない。
少しでもお役に立てているなら、本当に良かった。

空き時間には沢山の事を教えてくれて、このご縁には感謝してもしきれない。

「お先に失礼します!」

講義の時間割にもよるけれど、授業が終わったら職場へ直行、営業が終わって、片付けなどをして……22時には帰路につく。

22時半には帰宅して、遅めの夕食をとり、お風呂に入って勉強してから就寝。
その繰り返しだった。

「ただいまぁ……」

玄関に入ると、シチューのいい香り。

「あーみわ、お帰り」

「ありがとう、あっためてくれたんだ」

この春から、あきと同居を始めた。
家事は当番制、帰りが遅くなる時は要相談。
1人分作るのも2人分作るのも変わらないからという、2人で決めた決まりだ。

「あたし、あんたみたいにビッチリ予定入れてないし」と言うあきは、少しでも私の負担が少なくなるようにと、いつも協力してくれる。

まろやかでクリーミーなシチューを次から次へと口に運ぶ。
疲れた身体が、緩んでいくのを感じる。

「美味しい、ありがとう」

「あんたさ、ちょっと最初から飛ばしすぎじゃない? 身体壊したら元も子もないよ」

そう心配そうに言ってくれる姿は、まるでお姉ちゃんだ。

「大丈夫だよ、今頑張らないと!」

ほくほくの野菜が、口の中でほろりと溶けた。


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