第21章 夏合宿 ー4日目ー
「ん?」
「お願い、恥ずかしいから、その話ストップ」
「そうっスか? いくらでも話すっスけど」
嬉しそうに微笑む黄瀬くん。
その笑顔はとっても魅力的なんだけど、話の腰が折れちゃいそうでいけない。
「まあ、もうみわっちにアプローチしてくる事もないと思うっスから、そこは安心かな」
「……どういうこと?」
「いや、なんでもないっス。
とりあえずみわっちは、自分がモテるってこと、自覚して欲しいんスけどね」
「私が? モテないよ。モテたことないし」
黄瀬くんは呆れた顔になった。
どうして?
「ほんとにアンタって子は全く……」
「今回は本当に……ごめんなさい……噂に惑わされたり……キス、されたこと黙ってたり……」
「もういいっスよ……。
オレも昨日、意地悪してごめん。怖かったでしょ……」
昨日の、黄瀬くん……帯で縛られたのには驚いたけど、自分でも驚くほど感じてしまっていた。
あの、獣みたいな瞳。
思い出すと、身体が熱くなる。
握られている手が汗ばんできてしまった。
「……で、みわっち、この流れでいくと?」
「流れ? 試合の流れじゃない……よね? どういう流れ?」
「すっかりバスケに染まってる頭を、もっと色っぽい方に転換してくんないっスか」
「色っぽい?」
「仲直りにイチャイチャするんスよ、フツーは」
「え、もうこんな時間だよ!? 明日は一番キツイ合宿最終日なのに!」
「みわっち……オレ明日死ぬほど頑張るから。ネ?」
「え、う、その目、ズルい……」
「みわっち……」
黄瀬くんの顔が近付いてくる。
キス…………はっ!
「ちょっと待って!」
思わず両手で黄瀬くんの口を塞ぐ。
「ぶっ、みわっち、なに……」
「さっき聞いてて思った事があるんだけど、黄瀬くんもしかしてキスの時、目開けてる!?」
「……へ。開けてるっスけど」
「なにそれ! なんで! どうして!」
考えた事もなかった。
まさか、顔を見られてるなんて!
「そりゃ、感じてるカオ見たいからに決まってるじゃないスか。
みわっちのエロい顔、いいっスよね……」
「ちょっ……閉じて! 今日から閉じて!」
「無理言わないで欲しいっス!」