第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
「ごめんなさい、こんな勝手なお願い……自分の事ばっかり考えてるの、分かってる」
みわが、みわ自身の希望を自ら言ってくれた……それだけで、こんなにも嬉しい。
「そんなわけないっしょ。ちゃんと言って貰えて、嬉しいっスよ」
……お願いの内容自体は男にとっちゃ拷問と変わらないものだけど、きっとそれも、みわは分かってる。
だから尚更、言うのをためらっただろう。
少し前のみわなら、無理してでもオレに抱かれたかもしれない。
でも、これがみわの本音だ。
「オレ……いつまでも待つから」
身体目当てなんかじゃない……けど、好きな女の身体を欲しがらないでいられる程、聖人でもない。
でも、待つっスよ。
みわが、オレを受け入れようと思えるまで。
「……ありがとう、涼太」
小さな手の甲で拭った涙は、ふたりきりの空間に音もなく溶けていった。
それからは少し片付けをして、持って来たお茶を飲みながら話をした。
バスケの話、大学の話、これからの勉強の話。
そして……
「みわさ、バイトするって言ってたけど……どうするんスか?」
仕事の、話。
みわが今働けるような場所、あるか?
どこに行ったって、男はいるし。
「……うん、色々探しているんだけど、良いところが見つからなくて……頑張って、ファミレスとか、スーパーの裏方とか、かな……」
どこに行っても、スタッフにも客にも男が多すぎるほどいるだろう。
「みわ、焦って無理するのだけはナシっスよ、ナシ」
「うん、……分かってる」
無理して、働かなくても……。
お祖母さんには、お金に余裕があるみたいだし、今だけでも甘えればいいのに。
……でも、ぎゅっと握られた拳が、決意の強さを物語っていた。