第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
失敗した……!
なんで、箱になんて入れておいたんだろう。
いつも通り、鞄に入れておけば良かった。
恥ずかしい……!
慌てて隠そうと伸ばした手はあっけなく涼太に捕まり、くいと引かれるとあっという間におひさまの香りに包まれた。
ぎゅ、と抱きしめられた後に、するすると頭を撫でられて。
「涼、太……」
「も、みわ、可愛い。メチャクチャ可愛い」
まるで子どもをあやすみたいに、後頭部から下りていく指が……まるで、愛撫をされているみたいに気持ちがいい。
「……っ、ん」
指の腹が首筋を撫でた途端、声が漏れそうになってしまった。
「みわ、可愛い……好き」
ふわ、と髪にキスされたのが分かる。
片手で背中に触れられると、ゾクゾクと鳥肌が立って、思わず背を反らせてしまう。
「相変わらず背中弱いっスね、みわ」
くすくすと甘い笑いを零しながら、肩甲骨の辺りを撫でたり、腰に回ったり、お尻に触れたり……涼太が触れたところから火がつけられているみたいに、身体が熱くなっていく。
頭までぼうっとして、このままじゃおかしくなっちゃう。
「っ……りょう、た」
縋り付くように涼太の胸にしがみついて、ひたすらに顔をうずめた。
好き。
大丈夫、大好き。
身体が、どうしようもないくらい、熱い。
のに
気持ちが、ついていかない。
今まで私は、どうやって彼に身体を触られていたんだっけ。
胸の辺りが不安で、ぐちゃぐちゃしてる。
「涼太、や……っ」
もう、名前を呼ぶしか出来なくて、それ以上の言葉が出てこない。
はぁ、はぁと呼吸が乱れてくる。
落ち着かなきゃ、ダメなのに。
「みわ、怖い?」
彼の声に、心配する色が加わってくる。
違う、違うの。怖いんじゃない。
でも、何が違うのか分からない。
「大丈夫、怖くない……」
大好き。
それだけなのに。
頭の中が絡み合った糸のように複雑化してて、真っ直ぐにしようと思えば思うほど、ほつれた糸で埋め尽くされていく。