第75章 ※章名については1627Pをご覧下さい
翌日、今度は私のお引越し。
朝7時過ぎからお姉さんと涼太が来てくれて、既に荷造りを終えていた荷物たちを運び出してくれる。
「朝早くから、申し訳ありません!」
「いや、午後から練習あるオレの都合だし、みわが謝ることないんスよ」
「そうそう、気にしないで! って……みわちゃん、荷物、これだけ?」
「あ、ハイ……」
玄関に用意された、わずか数箱の段ボールを見て、お姉さんは心底驚いているみたいに口をぽかんと開けていた。
おばあちゃんが、高校までの教材はおばあちゃんの家に置いて行っていいと言ってくれたから……それ以外の勉強用専門書やバスケの雑誌などで1箱、靴やコート、鞄で1箱。下着やジャージなども含めた衣類で2箱。
あとは細々した私物が1箱。
「オレもモノにはそんなに執着ないタイプだけど……みわはそれ以上っスわ」
「そ、そうかな……」
そんな事を話しながら電子レンジや炊飯器などの小さい家電を積み終えると、アッサリと終わってしまった。
白のミニバンに皆で乗り込む。
お姉さんが運転席、涼太が助手席。
私がお姉さんの後ろに座って、3列目シートは畳んであり、荷物を置くスペースになっている。
「んじゃ、行くよ〜ん」
「お願いします!」
流れて行く景色を眺めていると、張り詰めていた気持ちが緩むような感じがする。
新しい世界に飛び込んで行くんだ……期待と入り混じる不安。
混ざり合ってマーブル模様になって、ぐちゃぐちゃと掻き乱していくようで……。
「みわちゃんはさ」
「はっ、はいっ」
「あ、ごめんね、突然話しかけて。どうするの? これから」
「これから……片付けが終わったら、バイト先を探して……勉強とバイトの毎日になりそうです」
生活するお金、勉強するお金、おばあちゃんに返すお金。
勉強だって、終わりはない。
時間がいくらあっても足りない。
「涼太はどうすんの?」
「んー、オレも。バスケの合間にバイトしてって感じ」
距離も出来るし、会う時間も無くなる。
今よりももっともっと、遠くなる。